あらゆるものを「つなぐ」金属部品
約4・5兆円のアパレル市場、約9500億円のカバン市場を支える服飾金具。コートの尾錠やベルトのバックル、持ち手やストラップの接続部分の丸カン、Dカンなど負荷のかかるところの大半に金属部品が使われている。その多くは海外生産や輸入製品だが、自社工場、国内生産にこだわり、汎用品から特注品まであらゆる服飾金具に対応してきたのが共栄産業株式会社(大阪市天王寺区)だ。
同社は1966年、現社長の小森英樹氏が個人事業として創業。自社開発の機械を使用し、コイル状の丸線の材料をさまざまな形に曲げる線材曲げ加工から金属プレス、溶接を手掛ける。材質も鉄・真鍮(しんちゅう)からステンレスやアルミまで対応、在庫している金属部品も2000種類を超える。多くの企業が海外生産にシフトする中、国内自社工場の安定した品質と積極的な製品提案により顧客を拡大してきた。
安定した品質を支える工場にはベテランの熟練工から、中堅・若手の技術者まで幅広い年代の社員がバランスよく配置され、若手技術者の育成や技能伝承にも力を注ぐ。
思わぬ業界で自社製品が使われている場合もある。某大手家具チェーンのカーテン陳列用クリップにも使われているのが、「あとになって気づいた(笑)」。家電など用途は広い。
工場の壁一面に保管されているのはこれまで手掛けてきた数百の金型。丁寧なものづくりの姿勢とこれまでの足跡をうかがい知ることができる。
今年、大阪産業創造館のホームページ開設講座に参加して、自社のホームページの全面リニューアルを行った。その直後から問い合わせや受注が増え、新たな顧客獲得のツールとして活用できるようにもなった。
今後は金属加工会社として、「これまでのノウハウを生かして新たな顧客獲得とともに、過酷な状況下で使用される消防、災害対応装備などに使用されるような耐久性のある金属部品も手がけたい」と語る。
モノとモノをつなぐ部品から、ヒトの命をつなぐ部品へ、同社の新たな挑戦が始まろうとしている。
(大阪産業創造館 プランナー 田中良典)
▲第二工場スタッフ