こだわりのファスナーで魅力プラス
競争が厳しいファスナー業界で、アイデアや発想力を生かしたデザインや機能を付加して、市場に新たな商品を提案しているのが協和チャック工業株式会社(大阪市鶴見区)だ。
創業から64年。長年培ったノウハウを礎に、生産体制では台湾と中国に30年以上の付き合いがある協力工場を持つ。海外工場であってもメード・イン・ジャパンクオリティーを追求し、品質管理を行っている。
2012年1月に代表取締役に就任した3代目の高井文晶氏は、1年を通じて海外を飛びまわりパートナー企業を訪れる。販路のアパレルメーカーは国内企業にとどまらず、海外にも広がっている。
「縫製業は、日本のものづくりの中でも衰退が深刻で、早い時期に生産拠点が海外に移転した業界。副資材としてのファスナーは、付加価値や新しいアイデアを受け入れてもらえる環境が乏しかった」と高井氏は語る。
苦しい環境を打開する手段を悩み考えた結果、第二の創業を決意。ファスナーだけでなく、最終製品までを企画し、一般消費者に直接届けるビジネスを立ち上げた。
今年立ち上げたネットショップ「L’Atelier(ラトリエ)」は、数百万人といわれる手芸人口向けにファスナーを直売する専門店として好評を得ている。さらには、サイズ・色・材質までを自由に選定できるオーダー生産にも対応しており、つくりたいものにマッチしたファスナーを求めるユーザーから多数の相談が寄せられている。
また、ファスナー自体の特長を生かしたバッグや雑貨などの最終製品を作り上げるプロジェクトも開始した。職人技が光る商品の開発を推奨する日本経年変化協会と協同で進める「R-18プロジェクト」では、使い込めば使い込むほど魅力が増すレザー製品に使うファスナーを開発中だ。「ファスナー目線でつくる完成品」をコンセプトに、これまで脇役だと思われていたファスナーが、製品自体の完成度に一役買っている。
第二の創業後、力を入れているのが採用だ。今年新卒で採用した営業担当とともに「ファスナーの価値を高めることで、世界から欲しいと思われる製品をめざす」と、力強く語る若い経営者のこれからの展開が楽しみである。
(大阪産業創造館 シニアプランナー 多賀谷元)
▲次の事業展開について新卒で採用した営業担当者と語る高井社長(右)