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【飲食店開業への道】会社員を辞め、「自分が来てみたいと思う店」を体現

2026.08.27

森石氏は会社員時代、自分へのご褒美として仕事帰りの食事やお酒を楽しみにしていた。そんなときに、出来合いのものを温めただけの料理や、風味の飛んだ熱燗が出てきて、がっかりさせられたことも数知れず。「せっかく外で食べるなら、きちんとした手づくりの料理が食べたい」と思うことが増え、「お金が貯まったら、いつかはそんな居酒屋を自分で開きたい」と夫に話していたという。すると夫から「お金は出すからやってみたら」と背中を押され、独立を決めた。

店主 森石 桂氏

出汁は自分でとる、胡麻豆腐を含めて料理は手作り、ハモは注文を受けてから骨切りをする、など「自分がお客だったらうれしい」ことを実践してきた。店名を「ちろり」(日本酒を燗する金属製容器)としていることからもわかるように、日本酒には妥協しない。自身が好きなうま口の酒を多めに仕入れ、お燗も40℃(ぬる燗)、45℃(上燗)、50℃(熱燗)と温度を選べるようにしている。

ビールサーバーのチューブや蛇口も、「おいしく飲んでほしい」との思いから毎日スポンジを通して水洗い。ビールメーカーの営業担当者がその清潔さに驚いたという。おいしさだけではない。「広告費をかけるくらいなら、お客さんに還元した方が良い」と店の入り口には常に生花を飾っている。仕事帰りにほっとひと息つける店として、常連客に親しまれている。

もっとも、飲食店でアルバイトをした経験もなく、最初は手探りの連続だったという。「特に難しかったのが仕込みの量の見極め。作り過ぎてしまうことが多く、ずいぶん無駄にしてしまいました」と試行錯誤の日々を振り返る。メニューには「1人で切り盛りしているのと、出来立てのおいしい状態で召し上がっていただきたいので、お待ちいただくことがあります。まずは、おまかせのセットをご注文いただけると、焦らずに作業ができるので助かります」との言葉が添えられている。常連客はそんな森石氏を温かく見守っている。

開業資金を全額負担し、応援し続けてくれている夫に対しては、「私がやりたいことをやらせてくれて、本当に感謝しています」としみじみ語る。毎日通い、カウンター奥の定位置に座る一番の常連客は、ほかでもない夫だ。「家で晩ご飯をつくれないので、ここで食べてもらっているんです」。まさにここは「おうち居酒屋」。これからも「ここに来たら安心すると思っていただける店でありたい」と、細く長く、続く店をめざしている。

(取材・文/山口裕史 写真/石川泰三)

【 開業資金 】 約1,000万円
内外装費約900万円と、物件の入居保証金と当初家賃併せて90万円の計約1,000万円。すべて夫が負担してくれた。

【 立地選定 】 
自宅から徒歩圏内で、かつ家賃がなるべく安いところを探した。近くにはオフィスや高層マンションが建っているエリア。

【 店舗デザイン・設備 】 
もともと洋風居酒屋だったところを居抜きで借りた。「落ち着ける空間に」と内外装、カウンター、椅子、テーブルなどに大阪府産の杉材を活用して改装。設備はほぼそのまま使えたので冷蔵庫や什器を新たに買いそろえた程度。

【 開業までに要した期間 】 1年 

【 「あきない虎の穴」担当者からのコメント 】
日本酒と手作り料理で仕事帰りに一息つける「おうち居酒屋」というコンセプトは、「虎の穴」に参加した時から一貫していました。特に個性が強いメンバーが揃っていた印象の15期の中では少し地味な印象ではありましたが、芯の強さは感じていました。講師のアドバイスを受けても、いいものをできるだけ安く、というこだわりは最後まで曲げませんでしたね。開業後もそのこだわりは持ちつつ、試行錯誤を日々積み重ねてきたことが、開業後5年で8割が廃業すると言われる飲食業界で10年も続いているポイントだと思います。 (大阪産業創造館 創業支援チーム 浜田 哲史)

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【 あきない虎の穴 】https://www.sansokan.jp/tora

おうち居酒屋ちろり

店主

森石 桂氏

https://www.facebook.com/chirori16

●事業内容/飲食店経営、調理、接客 ●座席数/12席 ●開業日/2016年7月29日