【編集長の独り言】それぞれの世代交代 「覚悟と美学」
私の祖母方の曽祖父「千年治おじいちゃん」は、
岡山で醤油製造をはじめ、手広く事業をしていて、
仕事も遊びも相当豪快な人だったらしい。
でも1人息子はまったく別の道に進んでしまったので、
名前は「千年治める」と書くのに、あっさりと廃業してしまった。
(あ、センネンジと読みます)
財産も借金も残さず、屋敷は町に寄贈し、キレイさっぱりの幕引き。
子孫に語り継がれるのはもっぱら彼の破天荒な武勇伝だけだ。
一方で、祖父方の家業を承継している実家では、
弟が四代目を継承するかどうかの微妙な時期。
父と弟が対峙することもなく、一向に進まない我が家の世代交代に、
ある二代目社長さんの言葉を思い出す。
「今、息子は大学生。内心継いでほしいが、継いでくれとは言いたくない。
あと二年のうちに、息子が自分から『親父の会社を継ぎたい』と言って
くれるような会社に再建してみせる」
継がせるほうにも継ぐほうにも「美学」と「覚悟」が必要な世代交代。
一般論やテクニックだけでは解決できない奥深いテーマだ。
先日、家業を継承した経営者の方8人とお話する機会があった。
8人それぞれに異なるバックグラウンド。
それぞれの葛藤や決断の中で後を継いだプロセスをお聞きして、
世代交代に「正解はないんだ」と改めて感じ入った。
廃業を決めた、うちの千年治お爺ちゃんにもそれなりの美学が
きっとあったに違いない。
ちなみにアサミちゃん(母)から、
「アナタの名前は千年治お爺ちゃんの名前から一文字取った」
と聞かされて育ったが、
一体うちの親は一人娘に千年治おじいちゃんの
どんなDNAを受け継いで欲しかったんやろ・・・