かわいくて、楽しくて、おいしい『eco』を発信
クッキーでできたカップにエスプレッソを注ぐ『エコプレッソ』は、まるごと飲んで食べられるだけでなく、「かわいくて、おいしい」と女性を中心に人気だ。
『エコプレッソ』が誕生したのは、林夫妻が老後のためにとオープンした天満橋のカフェ。
「エスプレッソを広めたいと言う主人を応援するつもりではじめたんですが、お客さんが来なくて経営難に」と話す林氏。
待っているだけではダメだと移動販売をはじめ、さまざまなイベントにも参加。
地球環境に配慮したイベントでは、再利用するリターナブルカップを洗うために、大量の水が使われていることに疑問をもった。
そんな中、友人がもってきてくれたアイシングクッキーにひらめいた。
「内側を砂糖コーティングしたクッキーカップにエスプレッソを入れたら甘味が加わる。それに、カップを食べれば洗水や洗剤も不要、プラごみも出ないから、とってもエコじゃない?」と。
試行錯誤のうえ開発した『エコプレッソ』をカフェで出したところ、エスプレッソの「苦い」「少ない」というイメージが消え、「かわいい」「おもしろい」「おいしい」と評判に。
メディアにも紹介され、インスタブームにのると一気にカフェが賑わった。
手書きでカップに文字が書けるメリットを生かして、企業やアーティストとのコラボも増えたが、手づくりのために1日100個の生産が限界。
そこで、経産省の「ものづくり補助金」に申請して機械化し、1日1,000個の量産を実現できるようになった。
さらに全国のエスプレッソを提供するカフェも、『エコプレッソ』を取り扱ってくれるようになった。
プレゼンの機会を得た海外で、日本はエコ活動にまだまだ消極的だと感じてからは、エコやSDGsについて勉強した。
『エコプレッソ』をグルテンフリーで耐久性のあるワッフル素材にして軽くし、価格を下げることにも挑む。
また、エコプレッソ基金を立ち上げて、地球環境保持やプラごみの問題に取り組む団体に寄付もしている。
でも、もっと『エコプレッソ』を身近な存在にしたいと願う林氏は、家庭で簡単につくれる「エコプレッソベーカー」や、スプーンやフォークなどの可食性食器の開発にも取り組んでいる。
「使う人が、楽しい! と感じる商品を生み出したいですね。その気持ちが、エコやSDGsについて考え、行動するきっかけになったらうれしい」。
夢は、エスプレッソの本場である、エコ活動が盛んなヨーロッパで『エコプレッソ』を広めることだ。
(取材・文/花谷知子 写真/福永浩二)