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艀運搬から乙仲で培った経験いかし、中小企業の海外進出の支援へ

2017.02.14

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大阪産業創造館 プランナー 志岐 遼介による連載 【ロジは一日にして成らず】

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vol.5 株式会社まるい「海外との輸出入でお困りの中小企業の皆さん、いつでも相談してください」

乙仲(おつなか)という言葉をご存知だろうか?
戦前に制定された「海運組合法」で、定期船貨物の取次をする仲介業者を乙種海運仲立業(乙仲)と呼んでいたことに由来している。海運組合法は1947年に廃止されたため、乙仲という言葉は厳密に言うと存在せず、現在ではフォワーダーや海運貨物取扱業者と呼ばれ、日本国内の商社やメーカーが海外と貿易する際に必要な手続きの代行業務などを行っている。
 
大阪市港区の弁天埠頭に本社を構える株式会社まるいは、昭和2年創業の老舗企業。舵を取るのは2016年4月から代表取締役社長に就任した合田佳史氏。

代表取締役 合田 佳史氏

まるいは、港の岸壁に着岸することができない大型船に積まれている貨物を沖合まで引取りに行き、岸壁まで運搬するという艀(はしけ)運搬を事業としていた。約40年前、港の岸壁が整備され、大型船でも着岸できるようになってからは、冒頭に紹介した乙仲に業務を拡大させた。現在も古くからの名残で多くのメーカーや商社から「乙仲さん」と呼ばれている。


フォワーダーと呼ばれる事業者は、荷主から貨物を預かり、外航海運会社や航空会社といった他の業者の運送手段を利用して運送を引き受ける。しかし、まるいでは、フォワーダーのような手配業務はもちろん、自前の倉庫で貨物を保管したり、自社で配送も行う。そのため、一般的に言われているフォワーダーとは直接荷主の貨物に触れるという点で少し業務が異なるという。
まるいでは食品から雑貨、建築資材まで取り扱うアイテムは幅広い。海外へ発送するには国によって貨物の扱いが異なるため、段ボールを開梱し、商品1点1点に専用のラベルを貼り付けるという細かい業務にも対応している。

この20年で中小企業も海外との取引が大きく増加したが、合田氏が感じるのは「貨物の正しい動かし方がわからない企業が多い」ということだ。
海外へ貨物を輸出する、逆に海外から貨物を輸入するためには幅広い知識が必要とされる。法令を全て網羅することは難しいため、どの管轄省庁の規定を確認すれば良いかといった調査能力が問われる。貿易に慣れていないと、これらを調べる段階でギブアップしてしまうという。港湾物流、国際物流、そして通関の知識を持ち合わせるからこそ、現在の仕事が成立しているのだ。

メイドインジャパンの製品が海外で高い評価を受け、輸出産業の活性化は大きく期待されている。これからの貿易産業に対し、自社のポジショニングをどう考えているのか?合田氏に最後に伺った。
「現在の業務の拡大はもちろん進めていきたいのですが、これからは中小企業の海外進出の支援ができればと思っています。今後、海外との取引が行いやすい環境に変化していくと思いますが、その時に、海運会社はどうやって選ぶの?など、些細な質問でも良いので聞いてほしいですね」と語ってくれた。 

社内玄関におかれている大きな舵。艀(はしけ)運搬をしていた時代の船で使用していたものとのこと。

前職では大手外航海運会社に勤務していた合田佳史社長。大阪産業創造館の若手後継者育成プログラム「なにわあきんど塾」の卒塾生でもある。

(取材・文/大阪産業創造館 ものづくり支援チーム プランナー 志岐 遼介)

株式会社まるい

代表取締役・通関士

合田 佳史氏

http://www.kkmarui.com/

事業内容/一般港湾運送事業、通関業、海運貨物取扱業など