販売する側に立って気づいた「ものづくり」に携わる喜び

 
祖父が創業し、父が継いだ靴工場の家に生まれた上田氏だったが、「継ぐつもりは全くなかった」という。大学卒業後に就職したのは、高級婦人靴ブランド。奇しくも実家の工場がOEM生産していた取引先だった。

「一番最初に内定をいただいた企業に就職しようと決めていた」が、偶然にも最初に内定を出してくれたのが高級婦人靴ブランドであった。

 
入社2年目で副店長になり、接客をするようになって悔しいと感じることがあった。せっかく気に入ってもらえても「甲が痛い」「ブーツの筒が入らない」などの理由で履けない靴があったのだ。

「ものづくりの側にいれば履けるように変えられる」。そんな思いが家業に気持ちを向かせた。

 

専務取締役 上田誠一郎氏

 
工場に戻ってまず始めたことは「作ることがゴールになっていた」職人の意識を変えること。

完成したすべての靴について上田氏が検品を行い、はじかれた靴について買う側の気持ちに立ってどこがいけないかを丁寧に伝えた。もともと返品の少ない工場だったが、年に1足あるかないかに減少した。

 
一方で、作る人を正当に評価しようとしない取引先の意識改革も迫った。

「より安く」ばかりを求める先には、手をかけた技術と細部に行き渡る配慮を説明し、卸値を維持した。他の工場に乗り換える取引先もあったが、自社の品質を認め戻ってきてくれた。 

 

 
2017年、高い技術を持った工場と消費者を直接つなぐファッションブランド「ファクトリエ」との取引がスタートした。

受注生産からスタートし、初めて届いた購入者リストを見て「うちの商品を待ってくれている人たちがいる」と現場の士気が上がった。

 
そして昨年、自ら商品開発と販路開拓にチャレンジするプロジェクト「大阪商品計画」に参加。

初の自社ブランド「brightway(ブライトウェイ)」で長く愛される定番商品となることをめざしメンズスニーカーを作ることを決断する。

 

初の自社ブランド「brightway(ブライトウェイ)」

 
前職で、売れ残った靴が廃棄されていくのを見て「捨てなくていい靴作りをしたい」と感じていた。「何より僕自身セットアップスーツに合わせられるスニーカーが欲しいと思っていたんです」と爽やかに笑う上田氏。

 

 
紳士靴は婦人靴とは似て非なるものだ。木型作りから勉強し、スニーカーを何足も買っては分解して試作した。情報発信の手段としてクラウドファンディングを活用したところ、目標の4倍の428万円が集まった。

「ふだん口数の少ない職人が“自分の靴も作ってみたい”と言ってくれたのがうれしかった」と上田氏。先々には海外展開も視野に入れる。

 
自分たちのやりたいことと、誰かの悩みや課題を解決できることが合致しているかを常に確かめるようにしているという上田氏。

それを家業で実現できることに感謝しながら、これからも「brightway」を歩んでいくつもりだ。

 

(取材・文/山口裕史)

2020年06月01日
株式会社インターナショナルシューズ
専務取締役  
上田 誠一郎氏
http://www.inter-shoes.com
https://www.brightway-osaka.com/
事業内容/婦人靴・紳士靴の製造

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