Vol.22 JRおおさか東線の全通で新設住宅着工への影響が最も大きかった「都島区」

 
2019年3月にJRおおさか東線が全通(放出~新大阪)し、来月で1周年となります。これにより、大阪市東部には3つの駅が新設されました。具体的にはJR野江(城東区)、城北公園通(旭区)、そしてJR淡路(東淀川区)です(それ以外には南吹田駅)。

鉄道の延伸効果として一般的に言われているのは、[1]移動時間の短縮、[2]居住、企業立地によるまちの活性化、[3]自動車交通量減・CO2 減による環境性・交通安全性の向上、[4]非常時代替ルート・防災拠点機能の確保などです。

こうした効果の中で、最もデータが収集可能な要因は居住者増加によるまちの活性化であり、具体的には新設住宅着工に着目して分析します。

おおさか東線延伸による住宅着工への影響が大きいと考えられる区は、新駅が誕生した上記3駅と、城北公園通駅の西側に隣接し、JR野江駅からも比較的近い都島区、を加えた4区と言えます。

そこで、これら4区の新設住宅着工戸数の推移をグラフにしました。ただし、東淀川区の行政区域面積は都島区や旭区の2倍以上ありますので、各区の行政区域面積で割り戻して、㎢当たりの着工戸数で表示しています。

 

図1 おおさか東線の全線開通効果が期待される4区の新設住宅着工戸数の動向

(出所)国土交通省「住宅着工統計調査」、大阪市統計書「市域の変遷(平成30年)」

 
これを見ると、2012年では城東区以外は70戸/㎢強と比較的低水準(市全体では118)でしたが、その後は城東区も含めて18年(市全体では170)までは概ね増加基調をたどりました。

グラフからも明らかなように、都島区は14年から18年にかけて城東区すら上回る高水準をほぼ維持してきました。このように、住宅着工戸数だけを見ると、都島区には非常に良い影響がもたらされたと言えますが、実はその中身が変容しているようなのです。

その内容とは住宅の広さなのです。具体的に、一戸当たりの平均床面積の推移を上記4区に加え、大阪市全体ならびに平均面積が狭い3区(破線、点線表示)についてグラフにしました。

 

図2 着工新設住宅の平均床面積の動向(上記4区、大阪市全体、狭い3区)

(出所)国土交通省「住宅着工統計調査」

 
まず、大阪市全体を見ると、2012年以降、減少傾向が続いていましたが、19年には多少持ち直しています。

その傾向と上記4区を対比すると、当シリーズのVol.18で紹介した“若者の街:東淀川区”は学生マンションなどの比率が高いため、以前から市平均を下回っていましたが、それ以外の3区は12年では市平均より約4㎡広かったのです。

13年から19年にかけて、旭区も城東区も減少基調ではありますが、市平均を上回る水準で推移しています。他方、都島区は、13年に一気に13㎡以上も狭くなり、その後も大勢としては縮小基調が続いており、市平均はおろか、東淀川区すら下回る傾向が続いています。

 
浪速区や西区など都心エリアにあって通勤にも便利な区では、単身者向けの賃貸マンションが多く建築されており、都島区よりも狭小な水準に位置しています。

都島区は総じて都心エリアとは言えないにもかかわらず、こうした区の水準に迫るくらいにまで狭小住宅が多くなっているのが現実なのです。都島区と比較的近い水準で推移しているのは、新大阪駅や十三駅を内包する淀川区なのです。

 
こうした分析結果から考察すれば、都島区は以前からOsaka MetroやJR、京阪の駅を抱えて交通の便が比較的良かった上に、おおさか東線の全通によって新大阪駅へのアクセスが格段に良くなり広域交通網に対する利便性も高まったことで、単身赴任のサラリーマン層などをターゲットにする住宅建築が活発化したものと推察されます。

その証左として、地価公示の住宅地上昇率を見ると、都島区は都心6区に次いで住宅地の地価上昇率が高い状況が続いており、都心近傍エリアの特性に類似するエリアへと変容したと言えるでしょう。

 
(取材・文/大阪産業創造館 徳田裕平)

大阪産業創造館 徳田裕平
建設コンサルタント会社やシンクタンクを経て、縁あって旧・大阪都市経済調査会の事務局長に就任。
大阪市をどうやって元気にするかをテーマに日夜、調査・研究に励む。

2020年02月18日

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