新芽に詰まった可能性を伸ばす

飲食店が集まる昔ながらの繁華街・十三。ここに、にんにくを栽培する農園があると聞くと大抵の人は驚くはずだ。駅から徒歩3分ほどのマンションの一室、10畳ほどのスペースに、水耕栽培のにんにくのスプラウト(新芽)がずらりと並んでいた。

代表の木村氏、水質管理の専門家・加原氏、新卒で入社した齋中氏のチームで、栽培から収穫、販売までを一貫して手がけている。

もとはサプリメントの製造とWEB販売を専門に、木村氏が12年前に立ち上げた会社。競合が増えてきて、食品そのものから効果的に栄養を摂取できないかと考えていたところ、出会ったのが水耕栽培だ。

安定した環境で育てられて、含まれる栄養成分をコントロールしやすい。サプリメントと同じように、「特定の栄養素を必要とする人に届けられるのでは」と農園経営に踏み切った。

根から芽まで丸ごと食べられる。“黄芽っこ”は炒め物やパスタ、おひたしなど何にでも合い、レンジで加熱して塩胡椒するだけでも美味しい。

にんにくに目をつけたのは、栄養価が高いこと。「アメリカの国立がん研究所ががん予防のトップに位置づけた野菜です。中でも新芽は栄養素が凝縮されていて、何より美味しい。和洋中どんな料理にも合うので、これに賭けようと決めました」と木村氏。

一般的にいう「にんにくの芽」は花茎のことで、本物の「新芽」は長く伸ばすのが難しく、あまり栽培されてこなかった。薄い黄色で、マイルドなにんにくの香りと柔らかい食感を持っている。

兵庫県養父市の提携農家から仕入れた生にんにくや、十三の農園で熟成させた黒にんにくも合わせて販売。

肥料や農薬を使わずまっすぐ育てられるのは、バクテリアを使った独自の栽培方法にある。「水中の養分をバクテリアが吸収し、水をきれいに保っています。にんにくはバクテリアを摂取してすくすく成長します」と加原氏。

収穫した新芽は“黄芽っこ”と名づけ、大阪府内の農産物として「大阪産(おおさかもん)」の認定も受けた。

「試食してもらうと良さが伝わる」というのは、各地のマルシェで“黄芽っこ”を対面販売する齋中氏。大手小売チェーンや外食産業向けの見本市にも積極的に出展し、販売ルートの拡大に力を入れている。「リピーターの方が増えて栽培が追いつかない時期もあり、困っています」。

試行錯誤してきた栽培方法。発芽の遅さが気になって調べると、夏場の輸送時の高温が原因だったことも。

十三だけでは賄えない。さらに早く安全に育てたいと研究を続けるうち、断熱性の高い箱の中で育てる方法に行き着いた。

箱の中なら一定の温度を保ちやすく、空調費が抑えられる。水分はミスト噴霧で済み、水道費も最小限。1畳ほどのスペースで50人分の“黄芽っこ”が栽培できる。まずは栽培システムの意匠特許を取り、キット化を画策する。

今は販路拡大と生産拠点の確保を並行して進めている。スーパーの裏手に自動販売機を置くような感覚で。それなら地産地消ができて輸送コストもかからない。

作業がしやすいため、福祉施設はどうか。極寒や熱帯地域でも栽培可能。「砂漠で野菜が作れたらいいですよね」。いろんな可能性の種になりたい、と夢はふくらむ。

代表取締役 木村寛子氏(右)、顧問 加原裕士氏(左)、水耕栽培事業部 齋中実季氏(中央)

(取材・文/衛藤真奈実)

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2018年09月03日
株式会社ヘルシーベスト ヘルシーベスト農園
代表取締役 木村 寛子氏
顧問 加原 裕士氏
水耕栽培事業部 齋中 実季氏
事業内容/国産にんにくの販売、黒にんにく・黄芽っこにんにくの生産・販売、粉末サプリメントの製造・販売

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