「小さな巨人」が生む樹脂を研究開発し続け、111年

古くはレコード盤に、今では粒状のチョコレートやサプリメントなどに。これほど大きく異なる分野で重宝される共通の天然素材とは?

1907年の創業の日本シェラック工業が111年の長きにわたって手がけてきた「シェラック」という天然樹脂がそれだ。

実は、このシェラックの生みの親は、体長1mm以下の小さな「ラックカイガラムシ」。この虫が木の樹液を吸い、住みかをつくるために体外に分泌したものがシェラックの原料だ。

シェラックが枝に層状に付着した塊を「スティックラック」という

漢方薬などを輸入する問屋としてスタートした同社は、1941年に日本で初めてシェラックの国産化に成功。当時は全国需要のすべてを補った。

ところが、1945年に空襲により工場が全焼してしまう。翌年に再建を果たした後、レコード盤を固める素材や工業製品への需要が高まり、繁忙期には3交代制の24時間操業で社員も120名に達した。

その後、レコードの原料が合成樹脂へ切り替わる時期にピンチが訪れる。「ここがキーポイントだった」と語る武田氏。

「スティックラック」を収獲し粉砕、精製、漂白、脱蝋したシェラック樹脂「乾燥透明白ラック」

シェラックの需要の新たな分野を探す中で、それまで板状で売られていたチョコレートやガムに、粒状の物が登場。ここで、菓子メーカーが探し求めていた素材とシェラックならではの特性がベストマッチ。つまり、暑い季節でも菓子類の粒同士が溶けにくく、くっつきにくい被膜剤としての機能が認められたのだ。

さらに粒状のサプリメントでは、防湿効果、臭いや苦みのマスキング効果など、天然素材という安心感も相まって、食品分野での需要の増加につながった。

「タイ、インド、中国などの原産地から輸入しているが、気候などで、不作の年もあり、毎年一定ではないのが悩みの種」と武田氏。その対策として、きめ細かい産地指導を行っている。

さまざまな色の粒状の菓子類や薬・サプリメントなどの被膜剤に使われる

用途に応じて脱蝋や漂白を行うなど精製の技術を駆使し、取引先の要望に応える。今後は東南アジアなどでシェラックを使った菓子などの開発が進むと見込んでおり、輸入取引先との交流を深めながら各国に向けた営業展開を図りたいと意欲的だ。

すでに認められている農薬や忌避剤、ヘアケア製品など、シェラックを添加することで有効成分の持続性を高めることが注目されており、視野を広げながらシェラックを活かす研究を日々続けている。

代表取締役社長 武田敏裕氏(中央)、研究室室長 松葉洋一氏(左)、営業部 木本敦氏(右)

(取材・文/工藤拓路)

2018年08月16日
日本シェラック工業株式会社
代表取締役社長  
武田 敏裕氏

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