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【長編】「世界のミテジマになる」 全社一丸で取り組む海外展開

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食品添加物や工業薬品などを扱うミテジマ化学。国内市場の縮小により、同業同士で限られたパイを奪い合う消耗戦を繰り広げるなか、巨大市場の中国に進出し、販路開拓の可能性を模索している。業界の中で先陣を切って海外にチャレンジし、奮闘を続ける末常社長に、中国ビジネスに打って出た経緯や現地での苦労、今後の展望などについて聞いた。

―事業内容は?

私はこの会社(ミテジマ化学)に来てまだ2年半なんです。以前は三菱商事で化成品を扱う仕事をしていました。早期退職制度を利用して会社を飛び出そうかどうか悩んでいたとき、この業界の大先輩であるミテジマ化学の前社長・小島さんから「お前、うちにこいや」と誘われたんです。

商社時代は事業投資会社の社長を務めたり、傾いた企業の経営に参画して立て直すなどの経験を数多く積んできました。でも商社の事業投資は短期で結果を出すのが基本です。技術ある大阪の中小企業で腰を据えて経営してみよう―そう決断し、小島さんの誘いを受けたのです。

当社はリン酸塩を中心とした化成品や食品添加物、工業薬品を製造・販売しています。この業界は内需型の産業で、国内市場と会社の成長がリンクしています。国内の市場規模が縮小を続ける現在は、現状維持では会社の売上げは3~5%ずつジリジリと下がっていく。でも古い業界ですからね。従来の商い習慣を引きずったままで、新たなことにチャレンジする機運がなく、結果として限られたパイを競合同士で奪い合うような状況です。

―中国進出はどのような経緯で?

利益を増やす方法は2つしかないと考えています。まず1つは売る量を増やすこと。では売る量を増やすためにはどうすればいいかといえば、販路開拓と付加価値の向上です。まず販路開拓に関しては、日本の限られたマーケットでシェアを拡大するのは相当難しい。ならば海外に販路開拓の可能性を見出すのは当然の考えでしょう。当社の場合、巨大市場の中国に着目しました。

付加価値の向上に関しては、日本の最先端技術は世界に誇ります。とりわけアジアなど新興国にとっては、日本の一世代前の技術でも通用する。つまり付加価値を高め、新たな顧客を創造するという点でも、アジアへの進出は不可欠なわけです。

利益を増やすもう1つの方法はコストダウンです。私がこの会社に来た当時は中国産原料を商社や問屋経由で仕入れていました。これらを中国から直接輸入することができれば大幅にコストダウンができる。

売上げは、現状維持では毎年3~5%ずつ下がっていきますからね。じり貧を続ける売上げをまず横ばいに戻し、上昇させるためにはどうすればいいか。そう考えた結果、中国市場を開拓すると同時に、中国から原料を直輸入することにしたんです。

ただ、この会社も業界と同じく保守的でね。これまで国内のルート営業しかしたことがないのに、いきなり「中国でものを売る」という方針を打ち出したので反発が出ました。でも会社をつくってしもたらこっちのもんでね。2012年4月に上海事務所を設立。その後、若い社員から次々に出張に出させたんです。

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―社員のみなさんには戸惑いがあったと思いますが。

うちの上海出張は現地集合が基本です。海外に出るのが初めての社員も容赦しない。自分で飛行機を予約させ、現地の空港から事務所までの移動もバスや地下鉄を使わせます。英語も中国語も話せない社員がほとんどですよ。だから最初は中国語のカードをつくらせて、「言葉に困ったらそのカードを出せ」言うてね。でもそうやって現地に慣れさせると、中国が少しずつ怖くなくなってくるんです。

顧客との交渉も社員に一任し、「どうやった?」と聞くだけ。もちろんトラブルなどが起これば私が前に出ますが、とにかく徹底的に任せきり、社員の能力を120%ストレッチさせることで、海外力が一気に身に付くんです。

2012年3月に上海で行われた中国国際食品添加剤和配料展覧会(FIC)に出展した際も、準備から運営まですべて社員に任せました。商社や問屋との付き合いが中心でしたから、そもそも日本でも展示会をやったことがなかったんですよ。恥ずかしい話、社員は自社の商品説明すら満足にできなかった。にもかかわらず、いきなり上海で展示会に出展したんです。

展示会のメンバーは、崖から突き落とす覚悟で若手で固めました。若いやつらを現地に放り込み、汗かかさなあかんからね。会社パンフやチラシを自分たちで手づくりしたり、展示会場のディスプレイや商品の見せ方を考えたり。最後は上海に全員が乗り込んで準備し、当日の運営も含めて展示会を成功させました。

そうやって若手を先に中国に投げ出すと、今度はベテラン社員も行かざるを得なくなる(笑)。いまでは若手、ベテラン関係なく、交代で上海に出張しています。

―業界の反応はいかがでしたか?

商社時代からこの業界には本当にお世話になってきたんです。だから業界ならではの慣習もよく理解しています。業界全体で足並みをそろえる風潮があるのもよくわかっている。日本が経済成長していた時代はそれでよかったんです。でも市場が縮小するいまの日本で会社を成長させようと思った場合、ときには業界の慣習を打ち破る必要がどうしても出てきます。

中国から原料を直接仕入れるというのは、商社や問屋との関係を断ち切ることを意味します。でも、それでは、当社と取引をしていた中間業者の利益がごそっとなくなってしまう。私はそうしたやり方ではなく、商社・問屋との関係を変えていくことが大事だと考えています。

具体的には、「原料は中国から直接輸入します。その代わりにうちの製剤製品を中国に売ってください」と商社・問屋に提案しているんです。日本という限られた市場で利益を奪い合う関係を続けていけば、業界全体が沈んでしまう。成長する分野で協力し合い、利益を生み出すしくみを一緒に考えていきましょう、そう訴えているんです。

ちなみに、機械設備も中国で購入しています。中国の機械の値段は日本製の5分の1。ただし、投資総額は変えていないので、その分、多くの機械設備を導入できるんです。

とはいえ、品質の優れた日本製とはわけが違いますから。故障や不具合がしょっちゅうある。それを何とかしようと若いやつらが試行錯誤を繰り返す中で、技術力がさらに磨かれるんです。中国の設備を導入する目的は、製造技術を高め、日本国内での差別化につなげることです。

―中国でのビジネス展開では苦労も多いのでは?

何よりまずは規制の問題ですね。食品添加物や工業薬品などを中国で製造する場合、厳しい許可申請をクリアしないといけないんです。まず食品添加物については、会社としての食品添加物取扱許可書に加えて、製剤の許可も取得する必要がある。日本の場合、許可を得ている素材の組み合わせの場合は申請の必要はありません。しかし中国の製造許可証の場合、製剤ごとに個別に申請しなければならないので大変です。

この規制の問題は、日系の食品添加物メーカーが中国進出する際のキーポイントですよ。何しろ大変な作業ですからね。まず許可申請のノウハウのある現地企業を探し、彼らにも理解できるよう自社の製剤を説明しなければならない。これを製剤ごとに一つずつ行う必要があるので大変な労力がかかります。当社の場合、現時点でようやく7つの製剤の許可が取得でき、現在さらに8つの製剤の許可を申請中です。

一方、工業薬品の製造については危険物許可を取得する必要があります。当社は「ミテラスター」という化学研磨液の許可を1年がかりで取得できました。このミテラスターを使用すれば、硝酸を添加せずに金属表面を研磨できます。有毒な窒素酸化物ガスなども発生せず、薬液濃度も一定で、製品の歩留まり向上が見込まれ、大掛かりな排水浄化設備がなくても安全・快適な作業環境が実現できます。日本の市場規模は小さいですが、中国ではざっと見積もっただけでも日本の数十倍の市場に販売ができるチャンスがあると考えています。

ほかにも製造委託する工場の問題もあります。これがまた困ったもんでね。日本ではあり得へんようなミスを平気でやるんですよ。中国市場の開拓を軌道に乗せるためには、品質の確保と安定供給が大前提です。だから製造委託先の社員教育に必死になって取り組んでいる最中です。

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―販路開拓は具体的にどのように行っているのでしょうか。

食品添加物については現地の日系企業ではなく、ローカル企業に営業をかけているんです。でもこれはハードルが高いですよ。まず価格に対する要求度が日本と比べてはるかに厳しい。さらに中国に出て初めて分かったことですが、すでにドイツの食品添加物メーカーが中国でシェアを伸ばしているんです。

だから交渉が厳しい中国という市場で、高い技術を持ったドイツのメーカーとも勝負をしなければならない。そのなかでも、すでにローカルの数社に対して、イカやタコの品質を向上させる食品添加物製剤の契約を結びました。これは大きな成果だと思っています。

ミテラスターに関しては、大手メーカーの工場でトライアルが進んでいます。とにかく価格面で厳しい条件を付きつけられているので、これをどう打破するか、悩みどころです。やはり当面は安値で切り込み、実績を積み重ねるしかないと考えています。

そもそも中国で商売しようと思たらね、片手で握手しながら、もう片方の手で相手をどつく力を持たんと話になりません。言葉はきついけど、ようは交渉の武器が必要やということです。相手をどつく力がなかったら、言うことを聞くだけの土下座交渉に成り下がりかねません。

―中国ビジネスにおける今後の展開をお聞かせください。

ここに来てやっと売上げの低下傾向を食い止め、何とか横ばい傾向まで回復させることができました。2012年4月に中国に進出し、これまで種まきをしてきた成果を来年以降、いよいよ刈り取る段階にまでこぎつけました。

日本では、何もしなければ売上げは3~5%ずつ落ちていきます。だから売上げを維持するというのは、数%程度は成長しているということなんです。でも日本市場ではさすがに5~10%の成長は厳しい。全体のパイが決まってるわけだから、どうしても利益を奪い合う格好になるんです。

今後の展望は、中国でしっかりと稼ぎ、その利益を日本に持ってきて、日本国内において研究開発に投資すること。このサイクルが回り始めると、ミテジマは強くなるんです。

さらに当社の社員の年齢層は若い世代とベテラン世代が多く、ミドル層が少ない。これは視点を変えると、若いやつらが育ってきた10年後に最大パワーを発揮するということです。だから10年後に中国ビジネスにおいても成果を出せるような構想を描いています。

私も商社時代に中国を始め海外ビジネスに数多く携わりましたが、最終的には人と人との信頼関係がベースやと痛感しています。中国人やから信用できない、日本人やから信用できる、という論調もありますが、私は違う。中国にも信用できる人が何人もいるし、日本にも人を騙す人は何人もいる。

その意味でも、中国ビジネスを成功に導く最大のポイントは、ほんまに信用できる中国人と出会えるかどうか、にかかっているといってもいいかもしれない。中国では5年ほど真剣に付き合うと、「老朋友(ラオポンユウ)」と呼び合うような信頼関係が築ける。だからラオポンユウを持てるかどうかが重要ですね。

私がこの会社に来たとき、社員の誰もが「うちは中小やから……」と尻込みしていた。でも中小は経験する機会が少ないだけで、社員たちはほんまに優秀ですよ。「中国でものを売るのは無理」「中国から原料を直接仕入れるのは無理」「どうせ中小やから…」そうやって逃げ腰やった社員たちも、最近では「中小やから…」と言う場面がなくなってしもてね。中国ビジネスは、度胸をつけて、本当のプロにならんと成功できませんよ。

私の夢は、大阪の中小だった我が社が、この業界で世界のミテジマになること。そしてできれば、同業のみなさんにも海外にチャレンジしてほしい。この業界はみんな苦労しているんです。しかし世界に目を転じれば、巨大市場が広がっていますから。これから海外に出ようとしている企業があれば、いつでも相談に乗りますので、お声がけいただければと思います。私たちの中国進出の経験が業界に少しでも役立てば本望です。それが日本人としての私の義務やと思うんです。

2013年08月09日
ミテジマ化学株式会社
代表取締役社長  
末常 裕治氏
設立/1957年 資本金/3.510万円 従業員数/55名 事業内容/リン酸塩を中心に食品添加物製剤・工業用製剤と原料を扱う。充実した機械設備に加えて、多様化する食文化や顧客ニーズに合わせた製品を提供するべく研究開発にも力を入れる。
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