ミシンメーカーだったフェザーは、ウイッグ(かつら)を縫うミシンの開発を依頼されたことをきっかけに、1964年以降ウイッグメーカーへと転じていった。
抗がん剤治療を受ける患者からの脱毛の悩みに応えるため、15年前にはデリケートな頭皮に配慮したインナーキャップをかぶって装着する医療用ウイッグ「フィットミー」を開発。その後、装着感を高め、抗菌・消臭性を加えた商品を次々に開発し、医療用ウイッグのさきがけとして業界を先導してきた。
がん患者は薬の副作用で頭皮が敏感になるため、洗髪でも悩みを抱えている。「低刺激性のシャンプーを作っている複数のメーカーに試作品をつくってもらい、ユーザーでのテストを3年余り繰り返したが満足のいくものができず、自社開発をほとんどあきらめかけていた」と浅野氏は苦労を振り返る。
患者が抱える数多くの悩みの中から特に「乾燥」・「優しさ」にテーマを絞り、シルク由来の洗浄成分をベースに開発を練り直していたところ、ウイッグの主力商品で採用していたシルクプロテイン加工のメーカーから「この人なら力になってくれるはず」と近大薬学部准教授の多賀氏の紹介を受けた。多賀氏の専門は分析化学で、魚皮などからタンパク質やコラーゲンなどの天然成分を抽出し実用化する研究を手がけている。
ちょうど近大産のブリから抽出したコラーゲンの立体構造を変え、肌の保護機能を高める研究を進めており、これをシャンプーの原料に使ったところ本来の保湿の働きに加え、頭皮にもやさしいことがわかった。「頭髪は水で洗っただけでも傷み、頭皮を傷つけてしまう。それをコラーゲンが守ることで刺激をより抑えることができる」と多賀氏。
これにシルクプロテイン、フコイダンなど保湿成分を加え「シルクで洗う泡シャンプー」として11月に商品化した。美容室や個人のユーザーからの反響は想像以上に大きく、販売は想定の3倍以上のペースで伸びているという。
「今後は医療用だけでなく、敏感肌の赤ちゃんやアトピー性皮膚炎で悩んでいる人向けにも広げていきたい」と自信作をじっくり市場に浸透させようとしている。
技術情報開発室長 浅野 正司氏(右)、近畿大学薬学部准教授 多賀 淳氏(左)
(取材・文/山口裕史)
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