人工衛星打ち上げも、小学校の授業も、すべての原点は「楽しそうだから」
【今夜のお客様】
代表取締役社長 棚橋 秀行氏
【社長のホンネ~新規事業編~】
人工衛星打ち上げも、小学校の授業も、すべての原点は「楽しそうだから」
人工衛星打ち上げへ挑戦
イケダ:棚橋社長と言えば、2009年に人工衛星の打ち上げ成功を牽引されたイメージが強いけれど、そもそも、電気工事を専門にしていた会社が、なぜ宇宙・衛星分野に進出を?
社長:電気工事って、どんなイメージがある?「きつい、きたない、危険」のいわゆる3Kで、若手の採用がホントに難しい。だから、メディアとかで取り上げてもらえそうな注目度の高い新規事業で、「電気っておもしろい!」「こんなやりがいがある!」ってことを知ってもらうきっかけが必要だった。
イケダ:それにしても、国への許認可申請やステークホルダーとの調整は、想像を絶する大変さだと思うけれど。
社長:そら、もう大変(笑)。総務省、経済産業省を何度めぐったか。でも、普段の仕事では知りえなかったことを勉強することもできたし、大学の偉い教授と懇意になれたり、JAXA(宇宙航空研究開発機構)とのご縁ができたり。宇宙という異次元の世界の扉を開いたことで、自分の価値観はもちろん、会社のネットワークが広がったことは、本当に代えがたい、大きな財産になった。
小学校教育への挑戦
イケダ:社長は本業以外の活動も多いとか。
社長:業界のイメージを向上させて良い人材を採用することは、電気工事業界全体の共通課題。若い人が「この仕事に就きたい!」って思ってもらえるようなきっかけ作りが大事やなと思って、大阪府電気工事工業組合で「電工兄貴」っていうキャラクターをつくったり、小学校で理科の授業で教えたりしてる。
イケダ:社長が理科を教えてくれたら、先生とはまた違った、リアルな授業になりそう。
社長:電気を扱うときは、利き手に関わらず、右手で扱わなあかん理由、分かる?
イケダ:え、えぇっと…。
社長:答えは「心臓から遠い」から。万一、感電しても心臓を守れる確率が高くなる。こんな理屈を知っていたら、テストのためだけに丸暗記するんじゃなく、楽しく役立つ知識として身に付く。これならわくわくするやん。
イケダ: 確かに、そんな授業だったら、私ももっと理科が好きになってたかも。
社長:モノづくりする人たちは、小さいころに味わった「おもしろい」っていう体験がベースになっていることが多い。だから現場を熟知した僕たちが教育に関わることで、実践に基づいた興味喚起ができるんじゃないかと。
新規事業は「楽しそう」が大事
イケダ:まったく新しいことを始めるのは、ものすごいパワーがいると思うけれど、その原動力は?
社長:「おもしろそう」「楽しそう」。あとは最初から「失敗したらどうしよう」とか考えすぎないこと。おもしろそうだからやってみる。そういうシンプルな気持ちやな。
イケダ:それは人が動くモチベーションの源泉だと心から共感するけれど、ただ、経営者としては「費用対効果」も大事じゃない?
社長:僕は「費用対効果」ではなく「費用対社会的効果」やと思ってる。「儲かる」って漢字は、「信」と「者」でできてるやろ。信頼された人間が儲かると思うねん。「おもしろそうだから、やってみよう」「社会の役に立ちそうだから、挑戦してみよう」そういう心意気で始めたことは、必ず賛同者を得られるし、それがいつか利益になって返ってくるんちゃうかな。
イケダ:短期目線での利益を考えてしまいがちな自分が恥ずかしくなるようなお話…。
社長:海外でまた新しいことを始めるねん。日本では当たり前の電気整備が東南アジアでは驚くほどできていない。そこで僕たちの技術が役に立つ。こんな嬉しいことない。
イケダ:仕事はツライなぁって思っていた自分がますます恥ずかしくなった。自分のためではなく世のため。儲けは信頼される者に訪れる。私も今日からその指針で行動します!