次世代の安全・衛生支える技術者集団
子供に人気のあるポンプ車やはしご車などの働くクルマ。正しくは特装車と呼ばれ、多種多用途な装備を施した車を指す。具体的には、はしご車、ポンプ車をはじめ、ゴミ収集車、バキュームカー、汚泥吸引車、高圧洗浄車、浄化槽水リサイクル車などであり、ニッチではあるが私たちの安全で衛生的な暮らしを守るために欠かせない存在だ。
そうした特装車の部品加工を行うのが1962年設立の清水製作所(大阪市住之江区)だ。板金加工を通じて暮らしの安全・衛生を支えるべく、日々技術の向上に励んでいる。なかでもよそでは断られこともある大物や固い素材の曲げ加工、製缶のほか、設計図面がそろっていなくても注文通りの形に仕上げることで得意先との信頼関係を築いている。3代目社長の大石聖二氏は「難しい仕事が多いため、消化するには社内の和が欠かせない。うちで働く方々には家族と同様の存在として、技術以上に豊かな心を育むように心がけています」と語る。
その心がけは同社の経営理念づくりにも現れている。これまでは目の前の仕事に打ち込めば、次の仕事につながり従業員の生活を支えることができた。しかし、今は若手や外国人の従業員が増え、仕事も難しくなり、改めて全従業員の心を1つにまとめる必要が出てきた。そこで社長自身が10年間かけて書き留めてきた仕事を進めていく上での心がけや価値観、そして将来像を明文化し経営理念としてまとめて従業員と共有しようと取り組んでいる。
現在抱えている課題は、自社技術を応用した新市場の開拓と海外展開だ。国内の特装車市場は成熟市場であり今後の大きな拡大は見込みにくい。そこで電動バイクなど次世代製品への自社技術の応用や、熱可塑CFRPなどの新技術開発も大学と連携した実施を検討している。一方、海外の特装車市場の中には、ベトナムなどこれから拡大が見込まれる地域があり、数年先を見据えて情報収集に取り組んでいる。今後は、自社の顧客対応力、品質管理水準、原価構造、納期対応力、安全衛生意識などをあらゆる面から見直して中期経営計画を策定する予定だ。次世代製品への自社技術の応用に向けて、社長は「家族同然の従業員とともに、他所ではお手上げの難しい注文に挑戦し、次世代の安全・衛生を支えたい」と抱負を語る。
(大阪産業創造館 コンサルタント 服部繁一)
▲大石聖二社長(前列左から2人目)とともに一致団結して次世代の安全・衛生を守る清水製作所の技術者
株式会社清水製作所