【アメリカ編】既存代理店との信頼関係を再構築し、売上急増
工場で使われる各種光式センサの開発・製造を得意とする同社の主力製品の一つが測域センサ。レーザーが対象物に当たって跳ね返ってくる時間を距離に換算し、平面空間を測定する機能を持つ。ロボットの目として障害物を検知したり、ドローンに搭載して複雑な建物の内部形状を自動的に画像化するソフト開発にも応用されている。
中でも2005年に国際ロボット学会で発表した“手のひらサイズ”の小型測域センサは、世界から注目を浴びた。特に欧米をはじめ、ロボット産業を今後の成長産業と位置づける先進国からの反応は早かった。
同社の海外展開の歴史は古い。1970年代から90年代にかけて台湾、韓国、米国などに代理店網を構築してきた。それでも売上に占める海外向けの割合は十数パーセント止まり。だが、測域センサへの海外からの高い関心を受け、海外市場で強気の数値目標を掲げる。
具体的にとったアクションが、海外のユーザーのもとに社員が直接営業に出向くことだった。ミッションを帯びたのは加藤氏をはじめとする貿易課の社員たち。米国を担当した加藤氏は、2009年から米国にテクニカルサポート要員として常駐させていた技術スタッフが築いたネットワークや海外の展示会、学会で集めた名刺をもとにアプローチを始めた。
しかし「俺たちが築いてきた顧客を奪うつもりか」と代理店は噛み付いてきた。「売上目標を達成するために私たちがサポートし、売上はあくまで代理店に帰属することを説明した。それでも米国に行くたび、どこに何しにいったのかと疑われた」と苦笑する。「隠し事はしない」をモットーに信頼関係を再構築していった。
成果の一つが、大手メーカーとの関係強化だ。まとめて購入するので値段交渉に応じてほしい、と連絡が入ったタイミングをとらえ、代理店、技術スタッフも連れて訪問。訪ねるうち、測域センサを搭載した開発実機まで見せてもらうことができた。「私達は世界各国に法人を持っていない為、日本から出向くことでメーカーの心意気を感じてもらえる」。
細かな要望を聞きだして製品に反映させ、継続的な受注につなげることができた。欧州も他の営業担当社員がイギリスの代理店とニ人三脚の営業を行っている。海外の売上はこの5年で5億円から10億円に伸びた。「目標はまだまだ先」。新型商品の開発も視野に入れ、売上倍増をめざす。
ここがびっくり!!アメリカビジネス
●日本製品に対する高品質イメージは米国でもまだまだ底堅い。
●「仕事を終えたら家庭モード」の人ばかりではない。
自宅からでもすぐに仕事のメールを返信してくれる人も多い。
▲米国での展示会には代理店、技術スタッフと協力して出展している。
▲回転しながらレーザースキャンで平面位置を測定する「測域センサ」。
▲営業本部海外営業部 課長 加藤 美穂氏
(取材・文/山口裕史)
北陽電機株式会社
営業本部海外営業部 課長
加藤 美穂氏
設立/1946年 資本金/5,000万円 従業員数/184名
事業内容/自動制御機器メーカー。光データ伝送装置と測域センサが主力。