ないなら、つくればいい 母としてのニーズでつくった保育園
幼保一体型バイリンガル保育園を運営するキンダーキッズ。創業のきっかけは、自らも母親である中山社長の「自分の子どもたちをバイリンガルに育てたい」という想いだった。当時のインターナショナルスクールは両親が英語を話せないと入学さえ難しく、英会話教室といえば週1回1時間程度。日本に住む子どもが英語環境の中で学ぶ場がないのなら、つくればいい。そんな発想が原点だ。
専業主婦だった中山社長は、1歳と2歳の子どもをカナダ人の夫に預け、商工会議所の起業家育成講座に参加。あちこちで起業の夢を語っていたある日、願ってもない申し出が舞い込んだ。「東大阪の体操教室の、2階が空いているから借りないかと。保証金なしで家賃は折半。物件も見ていないのに『やります』と返事をしました」。
手作りのチラシを新聞に折り込むと、問合せの電話が鳴りやまず、数ヵ月で定員に。東大阪校の開校から2ヵ月後には、2校目の八尾校を立ち上げた。以来、着実に成長を重ね、現在、全国18校を展開している。
経営者と母親、二つの役割に挟まれての葛藤もあった。「自分の子どもも通わせているとはいえ、園では経営者としての顔がある。寂しい思いもさせたと思います。その分、休日はしっかり向き合って、思い切り遊びました」。2人目の子どもから6歳離れて、3人目を出産。出産2日後に近くのATMで入金確認をしていて看護師に怒られたのも今となってはいい思い出だ。
「妊娠がわかった時は出産後の仕事に対する不安もありましたが、子育ても事業も同じで、やり始めたらどうにかなる。起業した当時は、1校立ち上げるのにいくら必要かもわからず始めましたが、むしろいろんな知識を持っていたら怖くて始めてなかった」と笑う。
どんどん生徒数が増えていく中で、他人の子どもを預かることの重責から、「事業をやめたい」と思ったこともあるという。しかし、そのたびに社内を整備し、セミナーや本で経営を学び直して自ら不安をとり除いてきた。これからもプリスクールの草分けとして、日本一のバイリンガル保育園をめざしていく。
(取材・文/北浦あかね 写真/掛川雅也)
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