スタッフ連載

【事業承継相談窓口の舞台裏】連載vol.6

2014.11.10

父の教えは「自分の人生は自分で切り拓く」

給湯器をはじめボイラの排気筒などステンレス製品の製造・加工を手掛ける株式会社山本製作所。今年7月、山本隆氏が3代目に就任したばかりです。現在35歳の若社長ですが、経営理念である「世の中に常に対応できる、挑戦し続けられる会社にする」ために、さまざまな課題に取り組んでいます。

そのひとつが売上比率の改善。同社の売上の大半を占めるステンレス排気筒の販売先は、約50%が一社依存になっていました。そこで、大阪産業創造館の商談会や交流会を活用し、新たな取引先を開拓。また、取り扱い製品を増やし、少しずつですが成果が現れ始めています。

一方、先代である父の信也氏。自身の経験から二頭政治になることを危惧した父は、世代交代し父の教えは「自分の人生は自分で切り拓く」た後は会長として残らず、60歳での完全引退を決めていたそうです。しかし、隆氏は世代交代のタイミングで新たに設立した会社の社長職の就任を父に依頼しましたが、父は大反対。というのも、その新会社は、将来的に自社でオリジナル製品を開発・販売していくための販売会社でした。

同社では販売を商社に任せてきた歴史があるため、父としては「取引先を裏切ることになるのでは」という心配ゆえの反対でした。しかしながら、これまでの取引先の商社にも高齢化の波が押し寄せ、後継ぎのいない会社が増えていたのです。新しい商社を開拓するのも一手ですが、自らの力で販路を開拓し今から体制を整えておけば、後継ぎのいない取引先の事業を受け継ぐこともできる。そこで、父を説得し新会社を設立しました。

隆氏が将来に向けて積極的に経営を進めるのも、子どものころから「自分の人生は自分で切り拓くもの。自分で決めて自分で責任を取りなさい」という、父の教えが大きく影響しているそうです。社長に就任した今、肩にかかる責任はますます大きくなっていますが、理想とする会社への想いもさらに強まっています。

社長の隆氏とその歩みを10年後に振り返るのが今から楽しみです。

 

arai
▲大阪産業創造館 事業承継なんでも相談所 荒井 祐己子
経営者対象のセミナー講座や若手経営者のためのビジネススクール「なにわあきんど塾」を担当。
長年耳を傾けてきた経営者の声をもとに同プロジェクトを立ち上げた。

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