【事業承継相談窓口の舞台裏】連載vol.7
めっき工場を継いだ女性社長の細腕再建記
事業承継のお手伝いを始めてから女性後継者の方との出会いも増えてきました。西成区のめっき工場・株式会社センショーの堀内麻祐子氏もその一人。「男性ばかりの業界でどう振舞っているの?」と思うほど穏やかな雰囲気の堀内氏の事業承継は、会社の再建という厳しいものでした。
入社当時の社内は長所を見つけるほうが難しい状況。巨額に膨らんだ負債が原因で、経営者側と社員側には信頼関係はなく、強みになる品質もなく、社員は惰性で仕事を続けていたそうです。
そんな状況でも「悪いのは経営陣。何としても社員を守りたい」と、変革を起こします。会社の生き残りに不可欠だったのが得意先を離さないこと。社員に不良削減と品質向上の重要性を伝え続け、会社の空気が変わり始めた矢先、リーマンショックが発生します。
工場の稼動は週3日に減り、賞与は出せず、当時の労働組合と一日中交渉したこともありました。しかし、この経験があったからこそ「社員は会社が守る」という決意が新たになったそうです。
その後、業績は回復し負債も半減した頃、父上が他界、「退職」が頭をよぎります。でも銀行や取引先からの支援継続の条件が堀内氏の社長就任だったため留まることを決意。その後も土地売却や銀行との債務交渉に取り掛かり、財務的な再建が実現し、現在、ようやく会社の未来について語れる状況が整いました。
後悔はなかったかという質問に即答で「一度もなかった」と断言する堀内さん。継がないという選択をしていたとしても、誰も咎めることはなかったと思います。でも「会社の理想の姿が明確だった。再建の信念があったから心が折れなかった」から頑張れたそうです。
現在、社員の方々と一丸となって新しい販路の開拓に取り組んでおられます。経営者にとって心の強さ・芯の強さがどれほど大きな力になるのかを教えてもらいました。
▲大阪産業創造館 事業承継なんでも相談所 荒井 祐己子
経営者対象のセミナー講座や若手経営者のためのビジネススクール「なにわあきんど塾」を担当。
長年耳を傾けてきた経営者の声をもとに同プロジェクトを立ち上げた。
経営者と後継者をサポートする、
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