Bplatz press

【ロングインタビュー】独立系メーカーとして生き残る

2014.09.09

>>> 系列に属さないということで苦労はありませんでしたか。

景気がよくなって自動車メーカーの生産が増えると系列に属しているメーカーはほくほくです。しかし、独立系の我々にはまったくその恩恵はありません。自分たちでお客さんを探すしかない。「うちの会社の強みは何なんやろう?」と徹底的に考え抜いて達した結論は、海外の各国で認知されているこの「ドクロ」ブランドでした。エンジンバルブでドクロにしかできないサービスを徹底していくしかないと考えたのです。つまり、「あんたのところのためにつくっているんやで。We are your factoryだ」と。数百本からでもつくるし、一部をコーティングしておいてといわれればする。そのような私たちのサービスを徹底するようにしました。そして世界にドクロファミリーを形成していこうということです。

さいわい日本製に対する信頼度は抜群です。パンフレットを作るときには、英語、スペイン語、アラビア語で表記し、製品の概要とともに必ず日本の文化や風景を伝える写真も一緒に入れます。これがまた人気なのです。この写真が気に入ってパンフレットを捨てずに残しておいてくれればいつ声を掛けてくれるかわかりません。

代表取締役 髙橋 祐子氏

代表取締役 髙橋 祐子氏

>>> 国ごとに細かな対応が必要になりますね。

多品種少量をやろうと思えば、オーダーごとに段取り換えが必要です。そのときに大切なことは、機械と機械の間にいる人間がいかに気を利かせることができるかということです。一人ひとりの人間がお客さんのためを思ってどれだけ気を遣ってできるかでものづくりは変わってくる。それをアピールするのがドクロのエンジンバルブなのです。

多品種小量には、在庫管理も重要です。毎月500種類ほどのバルブを作っているので、すぐに商品があふれかえってしまいます。在庫は1ヵ月分くらいに絞り、毎日、発注で出て行った数、製造して在庫になる数の出入りを毎日のように計算して間違えないようにデータ入力し、必要な分だけを生産するように気をつけています。

>>> そのためにどんなことを意識していますか。

お客さんと一体になることです。海外から当社にお客さんがみえるときは、必ず歓迎式をします。お客さんの車が工場内に入ってきたら、社員総出でその国の国旗を振って「ようこそいらっしゃいませ」と迎えます。小さなバルブメーカーで、特殊な製造技術があるわけでもない。それならお客さんに喜んでもらう工夫をしないと。

だから私は社員に「少々仕事ができてもお互い思いやる気持ちがない社員はいらない」と言ってます。だからその考えに合わない社員は辞めていきます。だんだんとそれが理解できる社員ばかりが残るようになっていくと、会社全体が同じ方向を向いてくれるようになってきます。定着率もどんどん上がっています。若い人が入ってきて定着するようになったので、今では20代、30代で社員の半分近くを占めるようになっています。

うちに入って半年ほどのある若手社員はもともとケーキ職人から転職してきました。話を聞いていると「この仕事がおもしろい」と言うので、「どうして」と聞いたら、「僕が今日製造した分のバルブで何台の古い車がまたよみがえるのかと考えると楽しい」と言うのです。それはうれしかったですね。

関西大学 商学部 2回生 勇 春彦さん

関西大学 商学部 2回生 勇 春彦さん

>>> これからも系列に属さない姿勢を貫くのでしょうか。

もし系列に属していたら父が感じていたように振り回されていたでしょうし、昔からの海外のお客さんの希望を叶えられなくなるかもしれません。そのときにあらためて量に頼らずお客さんとの信頼にもとづく仕事をしてきてよかったなと思いました。

最近国内で国産車の古い車を愛用している「旧車マニア」向けに広告を出したところ非常に好評でした。10本でもいいんですかと、注文が入ってきて、喜ばれています。これからも「ドクロ」ブランドを必要としてくれるお客さんを大切に仕事をしていきたいと思っています。

nihonseiki08

(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)

日本精機株式会社

代表取締役 

髙橋 祐子氏

http://www.enginevalve.co.jp/japanese/