現場改善で組織を一枚岩に
自動車や船舶の部品、各種機器部品などに使われるアルミダイカスト。複雑な形状であっても、大量かつ安定的に製造できることから、幅広い分野で活躍している。このアルミダイカスト製品を製造販売しているのが東陽精工株式会社(大阪市東成区)だ。
同社では、主力の自動車関連部品の仕事だけではなく、ガス部品や産業ロボット部品・建築金物部品などニッチな分野での営業を戦略的に強め、メーカーとの直取引を増やすことで、付加価値を高めた製品づくりへの転換をめざしている。
2012年11月に3代目社長に就任した笠野晃一氏は、25人の従業員の意識を一つにし、仕事に対するやりがいやモチベーションを高め、人が育つ環境を大切にする経営を心がけている。5Sを中心とした改善活動は全員参加。年末にかけて「改善2012冬の陣」と題したプロジェクトを実施した。
毎週、製造に関わる社員8人が自分で考え出した改善案を実践し、さらにその内容や成果について会長、経理、アルバイトも含めて全員で投票し、コメントと点数を公表。そして、約2カ月間実施した内容を、年末の忘年会で発表。1位から最下位までの順位を出し、優秀者には賞金を付与している。
この取り組みは、改善を実施する社員にも好評だ。全員からもらうコメントが励みや刺激にもなり、会社や同僚の役に立っていることが実感できる。これらが社員のさらなる改善への意欲につながっているという。次回は今夏を予定しており、新しい取り組みが楽しみだ。
このような取り組みは、現社長が専務だった時代から行っており、これまでにもたくさんの成果を生み出している。工場の外壁をペンキで塗る、床の段差をなくす、物置き場に落下防止のロープを張るなど、とにかく「発案したら実行する」ことを優先している。現在は、現場の技術者が自ら工程管理板の作成や金型替えの段取り改善にも着手。生産性向上に向けて具体的な活動が始まり、既に大きな成果が現れている。
24時間稼働している工場は、溶けたアルミの熱気のみならず、技術者の活気を肌に感じる現場だ。大阪市内で数少ないアルミダイカストメーカーとして、若い社長のもと、今後の活躍が期待される。
(大阪産業創造館 シニアプランナー 多賀谷元)
東陽精工株式会社