元金融マンの【マッチングの流儀】Vol.7 「イベントが先か、目的が先か」
金融機関に求められるのが「金貸し」だけではなくなった昨今。「じゃあ、取引先は何を求めているのか?」と頭を悩ます金融マンも多いとか。
元金融マンで、現在、大阪市の中小企業支援拠点「大阪産業創造館」で、中小企業の商売繁盛のために大奮闘中のワタクシ竹内心作が、金融機関の皆さんに「ビジネスマッチング」の極意を紹介していきます。
10回にわたってお送りするマッチングの流儀。今回はマッチングイベントの種類についてです。
「この前のマッチングイベント、400名も来場したらしいですね。大成功じゃないですか」。
商売がら、中小企業さんを主体にしたイベントを年中やっているのだが、金融機関の方からお褒めの言葉をいただけると、やはり嬉しい。来場者数は成功・不成功の一つの指標でしかないのだが、この時ばかりは「綿密な準備と大胆な広報戦略、出展企業への熱き想いの賜物ですよ。アッハッハ」と言ってしまうから、まだまだ私も修行が足りない。
さて、今号を含めて3回にわたり マッチングイベントについてお話していく。金融機関主催のイベントが増加する中で、様々な実施形態、工夫がなされている。今回はイントロとしてイベントの類型について触れる。
マッチングイベントをきれいに体系化することは難しいのだが、敢えてカテゴライズすると以下のようになる。
・展示型
・提案型
・交流型
中小企業の販路拡大、技術マッチングに対してはどれも有効なのだが、それぞれ一長一短あるので「実施する目的」に合わせて企画を練るとよい。
<展示型>
マッチングイベントとして、最初にイメージするのがこれだろう。整然と並んだブース、様々な展示品、来場企業と商談をかわす熱気・・・イベントに“華”を求めるならば、間違いなくこの形態だ。表現はわるいが金融機関にとって「やった感」を出すにはうってつけ。
しかし、肝心のマッチング成果となると難しい。展示会というオープンな環境で深い商談はやりにくいし、出展企業は次から次に来場者をサバくのに忙しい。主催者側は、あくまでも商談のキッカケを提供するというスタンスになるだろう。
<提案型>
自治体などでも、よく使われる手法だ。主催者側でバイヤー企業などを設定し、中小企業から商材提案を募る。多くの場合、イベント当日はブースの中で商談ということになるので、賑やかさはない。しかし、バイヤー企業と膝詰めで商談できることで成果はあがりやすい。名より実を取るのであれば、この形態ではないだろうか。
と、二つの類型について簡単に解説したが、独自の工夫を加えている金融機関は多い。例えば「展示商談会形式だが、事前予約して商談できるようにする」「展示会にバイヤーを招待して、深い商談ができるようにする」などなど。
最後に交流型を解説するが、これについては「大阪厚生信用金庫」さんの事例を是非ご紹介したい。厚生さんは非金融支援の方法として、早くからビジネスマッチングに取組んできた。特に「食」分野に積極的だが、その中で編み出したのがホテルとの連携。
取引先企業から食材・加工食品を集め、ホテルのシェフに調理をしてもらう。ひとつの料理として完成されたものを食事しながら交流ができる。企業がジャムをそのまま展示するのではなく、シェフがジャムとヨーグルトを混ぜてムース風のスイーツを作って試食をさせる。ジャムの活用イメージが湧いて、買い手側としても食指が動く。すごい仕掛けだ。
以上、今回は販路拡大支援の角度からビジネスマッチングイベントを見てきた。
しかし実際は企業間のマッチングに限らない。相手方が消費者、大学等研究機関、マスコミなどと変化することで、イベントの体形も変わる。機会があれば全国で行われているマッチングイベントを調査して、樹形図のように体系化してみたいと常々考えてはいるのだが、私自身 今度のイベントで来場者が増えるか減るかドキドキしているので今は無理だ。修行が足りない。
次号以降は、もう少しイベントの中身を深掘りして金融機関の事例もさらに紹介していく。
(大阪産業創造館 竹内心作)
【元金融マン竹内が手掛ける!】
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竹内心作
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岡山県出身、元銀行マン。大阪産業創造館と在阪の金融機関が協働して中小企業の販路開拓や売上拡大を応援する中小企業応援団を取り仕切る。愛読書は「鬼平犯科帳」、座右の銘は「守破離」の若年寄キャラ。