Bplatz press

人手不足を解消!ORAMの遠隔操縦システムが支える建設業界

2023.04.12

ショベルカーやブルドーザーが、無人で動く建設現場。操縦しているのは、快適な屋内環境にいるオペレーターだ。ORAM(オラン)株式会社が開発するのは、建設や物流現場で活躍するはたらくクルマの遠隔操縦システム。離れたところにある建機をネットワークを介して動かすことができる。

「人が居らん状態(=人手不足)を、人が居らん状態(=遠隔操縦)で解決する」のが、同社のコンセプト。工学博士である代表の野村氏は、建設業のDX(デジタルトランスフォーメーション)にエンジニアとして長年携わってきた。「高齢化や人口減少による人手不足に直面する業界。『遠隔操縦』というテーマに出会い、大きな可能性を感じて起業しました。1人で複数の建機や現場を効率よく動かせたら、生産性向上にもつながります」。

いきなり実機ではなく、まずは模型で操縦を学べるトレーニングシステムも開発。

建機の操作レバーに取り付けるコンパクトなロボット装置「RemoDrive(特許/商標登録)」は、メーカーを問わず既存の建機にそのまま取り付けられることにこだわった。さまざまなメーカーのレンタル建機が入る現場でも、簡単に付け替えて使うことができる。さらに、人が搭乗した操縦と遠隔操縦を即座に切り替えることも。「精密な作業はその場で人が操作するほうが早いこともあります。熟練作業者の動きを機械が学習できる機能も搭載しました」。思い描くのは、人と機械が協働する姿だ。

操縦席となる「Switching Cab」は、複数種類・台数の建機を1台のジョイスティックで動かすことができ、モニタにはセンサが読み取った地形の3D データと、鳥瞰を含む複数の視点を切り替えられるカメラ映像が合わせて映し出される。高画質でリアルさを追求するのではなく、人の目では実際には見られない遠隔ならではの超人的な情報を重視している。

既存建機の操作レバーに取り付ける軽量小型のロボット装置。取り外しも簡単。

ロボットを用いた遠隔施工は、将来的な自動化・自律化を見すえ、法整備もこれからという新たな分野。野村氏は国土交通省所管の先端研究にも参加し、建機・施工・通信という各分野のスペシャリストとフラットな立場で意見を交換する。必須となるワイヤレスネットワークの知見も集まり、同社では現場と操縦席をローカルでつなぐだけではなく、大手通信会社のパートナーシップを得て5G回線を活用。大阪の建機を広島から操縦するプロジェクトにも挑戦している。

人手不足の背景に潜むのは、安全面や労働環境といった現場作業ならではのデメリット。一方で、大規模なものづくりの一端を担う魅力も。「リモートワーク化できれば、身体的なハンディキャップがある方や、子育て中でフルタイム勤務が難しい方など、働き手の幅が広がります。そこから新しい視点が広がれば面白いですね」。

現在、反響の多さから「ORAMに人が居らん」と、志を同じくするメンバーを募集中。「社会を変えるような仕事ができるはず」と熱く語る野村氏。技術の進歩を牽引するのは、いつだって人の情熱なのだ。

代表取締役 野村 光寛氏 博士(工学)

(取材・文/衛藤真奈実)

ORAM株式会社

代表取締役

野村 光寛氏 博士(工学)

https://oram.co.jp

事業内容/建設機械等の遠隔化・自動化を図るメカトロシステム、及び付帯するソリューションの提供