自分らしさを認め、自信に変えてくれる存在
大阪産業創造館プランナー 中尾 碧がお届けする
社長だって一人の人間、しんどい時もあります。そんな時にモチベーションの支えとなり、「一緒に頑張っていこな!」と声をかけたい“人”または“モノ”がきっとあるはずです。当コラムでは社長のそんな“相棒”にクローズアップ。普段はなかなか言葉にできない相棒に対するエピソードや想いをお伺いしました。
【 vol.18 】株式会社三天被服~自分らしさを認め、自信に変えてくれる存在~
製造現場を支える上で大切な「作業服」。
安全性・機能性の高さが必須であるが、男性向けに比べると女性向けはサイズや動きやすさなど選択肢の幅はまだ狭く、男性用作業服の小さいサイズでまかなう女性も多い。
今回取材した株式会社三天被服社長の東谷氏は、「女性が働きやすい作業服とは何か」を追い求め、現状に立ち向かっている。
東谷氏が同社を創業したのは2015年。創業当初は作業服の仕入販売を行っていたが、6年前のある日、製造業を営む知人の女性社長から「現場の女性スタッフが着る可愛いユニフォームが無い」という相談を持ち掛けられた。早速、知人の会社へとヒアリングに向かった。
東谷氏自身、創業前から従事していた作業服の世界であったが、「重い」「ガバガバ」「動きにくい」と女性スタッフ達から聞こえてきたリアルな声は大きな衝撃だった。しかしこの経験は「女性にとってサイズ感がちょうど良く、軽く、動きやすい作業服を作ろう!」と東谷氏に決意させた。
それまでは仕入販売を主業としており、縫製知識は無かった東谷氏だったが、理想の作業服を作るために企画、デザイン、縫製を担う人を集め、プロジェクトチームを作った。
試作品ができていざ製造となったものの、海外移転や廃業により国内縫製工場が激減しており、小ロットに対応する工場探しに難航した。しかし東谷氏は諦めず、人との縁を紡いでやっと小ロットでも対応できる工場を見つけた。
今でもこれまで製造現場で使われていなかった生地を取り入れるなど、6年前に抱いた決意に向けて突き進んでいる。
試行錯誤しながら奮闘する東谷氏を支えるのが相棒の古澤氏だ。入社当初は事務担当だったが、2年前の繁忙期直前に仕入販売部門の中核スタッフが急に退職したことにより、東谷氏と2人きりで業務にあたることとなった。
古澤氏にとって初めての業務内容であったが、目が回るような日々を東谷氏と必死に乗り越えた結果、2人の間に達成感と強い絆が生まれた。今では古澤氏が同社の主業である仕入販売部門を担い、東谷氏は女性用作業服・オーダーメイド作業服の企画、営業に注力する。
そして全国が暗い雰囲気に包まれていた2020年春。古澤氏はある1枚の紙を東谷氏に渡した。それは「三天ニュース 第1号」。顧客に少しでも元気になって欲しいと、同社の出来事や東谷氏の様子、気持ちが明るくなるメッセージなど古澤氏が綴ったニュースレターだ。
読んだ東谷氏は、古澤氏が自主的に動いてくれたこと、そしてその素晴らしい内容に目頭が熱くなった。今も継続的に発行する三天ニュースには、多くの顧客から温かい反響が寄せられている。
取材中、東谷氏は「古澤氏は、私(東谷氏)が私で良いのだということを認めてくれ、自信に変えてくれる存在」とほほ笑んだ。
「お互いが良いところを活かし、アカンところを補いあおう」という東谷氏が古澤氏に伝えてきた言葉がある。この言葉を実践しながら、女性がその人らしく働ける社会の実現に向けて2人は力強く歩む。
(取材・文/大阪産業創造館マネジメント支援チーム プランナー 中尾 碧)
株式会社三天被服
代表取締役 東谷 麗子氏
古澤 香澄氏
事業内容/作業服などのユニフォーム販売、オリジナル女性作業服・オーダーメイド作業服の企画・製造・販売