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京都大学との共同研究が生んだ、口に入っても大丈夫な除菌剤

2020.09.16

大正14年創業の株式会社かわかみは、調味料事業と添加物製剤事業を2本柱とするメーカー。

調味料事業では、業務用キムチ液や浅漬調味料などが主力商品。添加物製剤事業では、食品の変色防止や日持向上、食品全般の除菌・洗浄分野を得意とし、環境に優しく、かつ安全で効果的な商品の研究・開発に取り組んでいる。

一般的に、食品工場や店舗で使用する除菌剤は、次亜塩素酸ナトリウムやアルコールを主成分にしているものが多い。しかし、次亜塩素酸ナトリウムは臭いが強くて危険性もあり、有機物に触れると効果が低下する。アルコールは水分に弱く、ノンエンペローブ型のウイルスには有効でないという弱点がある。

そこで、「次亜塩素酸ナトリウムやアルコール製剤でもなく、口に入れて安全で殺菌効果のある除菌剤を」という社長の発案から研究をスタート。感染症の専門家である京都大学西渕光昭教授との出会いから、約10年の共同研究を経て「シェルコート」が誕生した。

「シェルコート」の主成分は、ホタテ貝殻を高熱処理することで得られる焼成カルシウムで、強いアルカリ性が特徴だ。さらに、産業廃棄物として年々増加するホタテ貝殻を使用することは環境改善にもつながるという。ところが焼成カルシウムは非常に溶解しにくく、また溶解する範囲の濃度では全く効果が出ないという問題が立ちはだかった。

高濃度の焼成カルシウムを溶解させる原料がなくて途方にくれていたある日、研究室の棚にある乳酸ナトリウムとアルコールに目が留まった。意外にもまだ検証していないことに気づいて試したところ、溶解性が大幅にアップ(特許取得)。「殺菌効果を維持しながらも、白濁せず、透明な製剤に仕上げるという課題も解決することができました」(山下氏)。

その後、教授が保管する莫大な数の菌のなかから200程度の菌を選んで検証。ノロウィルス、O-157、カンピロバクター、その他食中毒菌全般に効果的との結果を得ることができた。またノロウイルスに関しては、国立医薬品食品衛生研究所平成21年ノロウィルス報告書により、効果があると報告されている。
現在は、大阪府立大学の協力により新型コロナウイルスに対する検証結果も出てきている。

「シェルコート」の強みはまだある。
「水分があっても効果を発揮するため、厨房であれば水を多く使用するまな板やシンクまわりで活躍します」(山下氏)。
「外出時に子どもが素手でお菓子を食べるときも、シェルコートがあれば安心。手指の除菌にさっと使える携帯サイズも揃えています」(石原氏)。

食品添加物由来成分のため、口に入っても問題のない除菌剤。使用後に洗い流す必要がなく、食品に直接使うこともできるという、かわかみの自信作である。

右から大阪営業所 所長・栄養士 石原 久美子氏、研究部 副部長 山下 泰治氏

(取材・文/花谷知子)

 
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株式会社かわかみ

大阪営業所 所長・栄養士 石原 久美子氏
研究部 副部長 山下 泰治氏

http://www.kawakami.co.jp

事業内容/調味料・食品添加物製剤の製造・販売、食品技術の研究開発