経営者は夢を実現できなければ うそつきになってしまう
車両情報からドライバーの運転傾向を分析し、安全運転を導くスマホアプリの開発をはじめ、データセンター運営を手がけるなど最先端の情報通信関連企業として成長著しい株式会社スマートバリュー。だが、つい20年前は町工場として苦境に立たされていた。
亡き父の跡を受けて引き継いだ自動車部品の修理工場で多くの理不尽な出来事にぶつかる中で、渋谷氏はある結論に至った。「メーカーの方針次第で特約店は簡単に弾き飛ばされる。自分達でコントロールできる事業を築かなければ」。
本業とはまったく関係のない携帯電話販売業に乗りだしたのが93年。96年にはインターネットサービスプロバイダー事業に参入し、3千人にまで会員を増やした。だが、競合が増えまもなく赤字に陥る。13人いた社員の半数は愛想を尽かして辞めていった。会社の成長を夢見ていた社員からは「うそつき」と罵声を浴びせられた。
「経営者は夢を語るのが仕事だが、夢が実現できなかったらうそつきになる」。そう心に刻み、残ったエンジニアとともに、自治体向けのデータセンター構築やソフトの受託開発の仕事を積み重ねていった。自動車部品修理業のカーナビの卸ルートを活用し、自動車などの動態をクラウドで管理するサービスも始めた。気がつけば、インターネットのインフラからその上に載せるクラウドのアプリケーションまでをすべて自社で完結できる仕組みが出来上がっていた。
「安住してしまえばイノベーションは生まれない。めざすゴールを実現するために365日24時間どれだけ時間を使えるか、自分に負荷をかけてきた」。
10年近く働いている社員から最近こんなことを言われた。「社長は私が入社してから一回もうそをついていません。言ったこと全部やりきってますね」。
300人近くに増えた社員の平均年齢は30代前半。10年後には人件費だけで3.5億円増える。「日本の内需が期待できない中で、成長し続けるためにも立ち止まっている時間はない」と、無限の可能性を秘めるクラウドビジネスに注力していく構えだ。
▲「なにくそ!という気持ちでやりきることは、自信につながる、やった時間はうそをつかない。しんどいけれど、365日24時間やりきるしかありません」。
※【長編】「必死こいてやりきる」町工場から情報通信事業へ業態転換
https://bplatz.sansokan.jp/archives/1186
株式会社スマートバリュー
代表取締役社長
渋谷 順氏
設立/1947年 資本金/1,000万円
従業員数/265名 事業内容/データセンター、モバイルショップの運営をはじめ、クラウドを活用した自治体向けの住民情報サービス、自動車やバイクなどの動態管理システムの開発を手掛ける。