シリコーン塗膜技術で新事業へチャレンジ
東大阪市に本社を構える森内織物は、3代続く繊維メーカー。オフセット印刷の「ブランケット」と呼ばれる転写ローラーで用いられるゴムの裏地の生産を主業務にしており、国内では約7割、海外でも約4割のシェアを持つ。ニッチなジャンルのトップランナー企業だ。
しかし、社会のデジタル化に伴って印刷市場の先行きは不透明に。そこで、「本業で余力があるうちに次の一手を」と考え、新事業に乗り出すことにした。狙いを定めたのは、シリコーンを用いた塗膜技術の開発だ。
コーティングという技術領域には以前から興味があったという。また、同社にはポリエステルやナイロン、ガラスなど、さまざまな織物に関する知識がある。それらを組み合わせることで、新たな可能性が広がるのではと考えた。「そんなとき、知り合いの会社からシリコーンコーティングを紹介され、チャレンジを決めました」。
現在、研究開発と評価試験の真っ最中でもある同社の技術。耐久性・耐候性というシリコーンならではの特性を活かし、カーポートやのぼり、防草シートなど、屋外で使用を想定して性能の向上と販路開拓に取り組んでいる。また、人体に無害という特性から、塩化ビニールコーティングの代替品としての可能性にも期待している。
ガラス繊維を扱える同社の強みとして、耐熱性もあげられる。高温にさらされる工場内で何らかのシートを使用したい場合、塩ビ製だと熱で軟化してしまう。対する同社のガラス繊維とシリコーンコーティングの組み合わせだと、200℃以上の高温にも耐えることができる。
同社ではさらに、「織物✕シリコーンコーティング✕縫製」という3つのプロセスを組み合わせ、二次加工品の開発にも挑んでいる。まだ試作品段階だが、バッグの製作にもチャレンジしているという。
「当社の一番の強みは、中小企業ならではのフットワークの良さだと考えています。可能性のあることにはためらわずに挑戦して、結果や反響を見ながら軌道修正をする。その繰り返しで前に進んでいく会社です。開発中の技術も、私たちが想定していない用途があるかもしれない。そのためにも、どんどん情報を発信していって要望などを聞かせてもらい、それにお応えできる技術を生み出していきたいです」。
(取材・文/松本守永)