《講演録》社運を賭けた単品勝負戦略!〜八天堂のくりーむパンを愛され続ける商品にするまで〜【後編】
♦奇をてらうのではなく、スタンダードの組み合わせから『くりーむパン』を開発
もともと私は商品開発が得意なのです。ただ、以前は珍しいものや奇をてらったものに走りがちで、一時的に注目されるものの、すぐに売れなくなるようなものばかりを作りがちでした。
そこで、勝負の一品を開発するにあたっては、経済学者シュンペーター氏の、ありものとありものを掛け合わせて新しいものをつくるという『新結合』の概念をヒントにしました。実際に世の中のヒット商品を眺めると、どれも“スタンダード×スタンダード”でできていて、全くの新しいものなんてないんですよ。
ひとつめのスタンダードの“クリームパン”にたどり着くまでに1年半かかりました。もうひとつのスタンダードとして、色々な食感の中から”口どけ”を選びました。パンで口どけを売りにしているものはなく、私自身もハード系のパン屋で修業していましたので、パンで口どけをうたうなんて邪道だと思っていました。でも、日本人は大好きな食感ですよね。
何度も何度も試作を重ね、冷蔵庫に入れても硬くならず、おいしいクリームがたっぷり入るパンの開発に成功しました。名称はシンプルに「くりーむパン」とし、包装も八天堂のロゴを前面に打ち出して、当社の歴史を感じてもらえることを重視しました。
東京と大阪で受容価格を調査した上で価格設定し、税込み200円(当時)という日本一高いクリームパンとして発売開始することができました。手土産という比較的ニッチなニーズにぴたっとはまり、おかげさまで、このくりーむパンは東京進出してから今年で11年になろうとしています。
次ページ >>> 選択と集中で武器を磨けば、他社とのコラボレーションで展開が拡がる