検証重ね独立、美容室に新たな価値を加える
前田氏はある美容室の“大番頭”として会社を大阪有数の規模に導いてきた。ただ近年はこれまでの新規出店の方程式が通用しなくなっていたという。利用者の本音を探るべくアンケートを取ってみると、7割強の人が「冷え」を悩みに挙げ、苦しんでいる姿が浮き彫りになった。
この結果をもとに、基礎体温を上げて免疫力を高める「温活」をフックに「体の悩みを相談できる場」を作り、集客に生かすアイデアを会社に提案した。状況が許さずゴーサインは出なかったが、兼任で事業化に向けた検証をすることは許された。
実験の場として開設した「37LABO」は「自分の心身の悩みをさらけ出せる場」として口コミだけで予約が埋まり、4万円の月あたり客単価を叩き出す。サービスの方向性に確証を得て独立を決めた。「会社が大好きでずっと勤め続けるつもりでしたが、美容業界に貢献できるなら」と踏み切った。
現在は自ら「37SALON」を運営しコンテンツを磨き上げながら、健康のチェックシートを入口にしたパッケージサービスを美容室に提案。すでに15社に採用されている。「お客さんの求めていることを検証しながらかたちにしていきたい」。美容業界に風を吹き込む挑戦が続く。
◎準備期間:1年
当初は会社の新事業にするはずだったが事業化が難しいとわかり、事業の検証期間が結果的に起業の準備期間となった。
◎開業資金:100万円
トライアル事業として始めた「37LABO」での実績が信用となって、起業時に金融機関から2,000万円の融資を受けることができた。
◎家賃:売上の15%
「37LABO」開設時の家賃は、オーナーの厚意もあり売上連動型で、負担を最小限に抑えた。
(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)
―― 起業年表(起業ストーリー) ――
◎2017年6月
「37LABO」を開設。半年かけてニーズはあるのか、どんなコンテンツにすればよいのかを検証。
◎2018年1月
どこにもないサロンとしてリピート率93%、月あたり顧客単価4万円、に手ごたえを得て、会社を退職。
◎2018年3月
「37SALON」を開業。開設当初は女性ユーザーが多かったが、現在は健康管理に興味がある経営者や男性ユーザーも多い。
―― 働きながら起業準備してみて ――
◎良かった点
会社の事業と兼業しながら新たなコンテンツの事業化の可能性を検証できた。
◎苦労した点
当初はビジネスにつながるものはなんでもやってみようと化粧品開発にも手を出したが、外部業者に任せきりになって失敗。以来「背伸びせずこつこつと」をモットーにしている。
◎気を付けるべき点
起業時も顧客、同僚にも一切事業内容を知らせず一線を引くなど、会社に迷惑が掛からないように努めた。
―― <起業・独立>ココがポイント ――
起業の形としてよくあるのは、提供する商材を決めてニーズを検証していく方法。しかし、前田さんは利用者のニーズを探り、提供できるサービスを構築していきました。更に、そのサービスを、利用者に提供するだけでなく、ノウハウをパッケージ化して美容業界に提案することで、ビジネスの成長性にも可能性を感じました。従来の美容系サービスとは競合しない、新たなポジショニングを確立した新規性のあるビジネスモデルに期待できます。
(大阪産業創造館 経営相談室スタッフコンサルタント 岡島 卓也)
https://www.osaka-toprunner.jp/
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