ものづくり

開発・提案型商社という新カテゴリーで次代の量産を支えるねじのエバンジェリストたち

2019.08.01

2020年に設立70周年を迎える池田金属工業株式会社は、ねじ一筋に歩んできた。

スマートフォンやロボットなど精密機械に使われるシャープペンシルの芯ぐらいの細さのものから、発電所の発電機などに使われる電柱並みの太さのものまで、扱うねじの種類は数十万にのぼるという。

文字通り、戦後の経済成長の見えない部分をガッチリと「締結」してきたねじ業界だが、同社は異彩を放つ戦略で着実に前進してきた。その武器の一つがPCトルクアナライザーによるトルク解析サービスだ。

量産現場と同様の高速回転下でのトルク解析が可能なPCトルクアナライザーは開発提案型営業の有力な武器となっている。

ねじはきつく締めれば良いというものではなく、金属やセラミックなど締結する相手の素材やねじ自体の強度、使用ドライバーなどにより適正なトルク(回転力)が定められる。

PCトルクアナライザーを使えば、手動のトルクレンチでは再現できない、現場と同じ条件下の回転数で適正トルクを計測できるとあって、安全・確実な量産体制の実現を求める多くの企業の関心を集めている。

「お客さんから言われた物を提供してきた業界なんですが、うちの強みはユーザーの困りごとを解決する提案ができること」と話すのは商品開発部の課長、砂邊氏。

ねじ業界の枠組みからの脱皮と飛躍をリードするのが商品開発部なら、その成果と知見を直接ユーザーに拡散するのが石戸氏率いる直需グループだ。

若手中心のメンバーで各種展示会への出展をはじめ、メーカーの設計・技術関係者向けに「ねじの基礎講座」「トルクアナライザーを用いたねじのトルク曲線解析セミナー」「ねじのゆるみセミナー」といった啓発活動も積極的におこなっている。

本社のストックヤードには多種多様なねじがQRコード付きの箱に整理されピックアップしやすく収納されている。

もともとねじ業界に高いモチベーションを抱いて入社してくる若者は少ないという。しかし、ねじの奥深さと産業における価値を知るにつけ、彼らはほどなくねじのエバンジェリスト(伝道者)として育ち、先述の講座や展示会の主役として活躍する。

社員自ら「イケキン」と親しみを込めて呼ぶ同社の最大の強みは、話のわかる上司と若者たちとの締結から生まれるヒューマンなトルクパワーにあると見た。

営業3部部長直需グループリーダー 石戸達也氏(左)、商品開発部課長商品開発チームリーダー 砂邊康之氏(右)

(取材・文/山蔭ヒラク)

 

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