国内外で700万個 改良重ね、定番商品化
同社を取材に訪れるまでの約1時間の道のりで「anello®(アネロ)」のタグが付いたリュックを身につけた女性を10数人見かけた。年間700万個のバッグを売上げ、国内かばんメーカーで今最も勢いのある会社のひとつだ。
基幹ブランドであるanello®のかばんに火がついたのは2014年、がま口のようにパックリと入り口が開く「口金リュック」がラインナップされてからのことだ。「大きな物でも入れやすい」という機能性に加え、シンプルながら豊富なカラーバリエーションと、3,900円を中心とした手頃な価格設定で、若い女性を中心に大ヒットした。
インバウンドで日本を訪れた香港の女性がその使いやすさに注目し、インスタグラムに投稿したことがきっかけで海外での人気にも火がついた。国内外でファンを増やし、前期88億円だった売上げは今期115億円を見込む。
吉田氏は雑貨卸で創業した後、すぐにメーカーに転じ、ペンケースやポーチ、そしてかばんへと取り扱い製品を広げた。従業員が増え、海外に専属工場ができたことで「より責任を自覚してものづくりをしていかねば」と、2004年、05年に相次いで自社ブランドを立ち上げた。
以来、こだわってきたのは「飽きのこない定番商品をいかに増やすかということ」。そのために企画部門に全社員の2割を充てる一方、「毎年のように改良し、手をかけて定番商品に育てていくのが君たちの役目」とユーザーの声に耳を澄ませる大切さを営業担当者に説いてきた。
例えば「口金リュック」に下に入り込んだものを取り出しやすくするために背中側に縦長のジッパーをつけたのもその一つ。「口金リュック」は2つの高校でスクールバッグにも採用されている。
今年は大阪、東京にanello®ブランドの旗艦店を出すことを目標に掲げ、海外では昨年から展開しているタイのanello®ショップを今年は50店に増やすほか、6月からはフィリピンでもanello®ショップの展開を始める。
気がつけば、かばん業界に身を置いて30年が経とうとしている。栄枯盛衰を目の当たりにする中で感じるのが「勢いだけで大きくなろうとした会社は必ず行き詰まる」ということ。そのために社員に発信し続けているのが「丁寧さ」だ。「社員が成長すればおのずと商売もついてくる」と、これからも「丁寧さ」を忘れることなく、かばんづくりに向き合おうとしている。
(取材・文/山口裕史)
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