誰が食べても美味しい「やわらか食」
やわらかく加工された煮魚、焼魚、あわびのやわらか煮。煮魚は骨も丸ごと食べられる。UDF(ユニバーサルデザインフード)区分の1(容易にかめる)や2(歯ぐきでつぶせる)に認定された「海商のやわらかシリーズ」は、京風おばんざいまで15種類が揃う。
65歳以上の人口が4人にひとりを占める、現代の日本。大阪・京都の百貨店で高級鮮魚店を営む同社も、顧客の多くが65歳以上のリピーターだ。以前は人気だったアワビの刺身が売れない。理由は、「かたくて噛めなくなってきた」と常連客が教えてくれた。「咀嚼力が衰えても、美味しく食べられるものを提供したいと考えたのが開発のきっかけです」と髙光氏。
農林水産省も介護食品を「スマイルケア食」として枠組みを整備。噛んだり、飲み込んだりといった食機能の問題から引き起こされる低栄養状態を改善し、健康寿命を延ばすため、美味しくてやわらかい食品の普及を広げる試みだ。高度な設備投資や臨床試験の必要がなく、設けられている基準は硬さ。まずは得意とする魚介製品から噛むことや食べやすさに配慮した商品を開発し、硬度測定を実施した。
同社では鮮魚店以外に、てっちりやクエ鍋、魚の味噌漬けなど贈答用の加工食品の製造・販売を手がけている。今までに培ってきた製造のノウハウを生かし、食材に圧力や熱を加えやわらかく仕上げることはできたが、苦労したのは原材料となる魚に個体差があること。サイズや切り方、部位によっても硬さや骨の具合は異なるため、一匹の鯖に対して複数のマニュアルを設けるなど手間をかけた。また、肉の場合は酵素の力でやわらかくするなど食材によって手法を変えて工夫している。
一番大事にしているのは、誰が食べても美味しいこと。「たとえば、おじいちゃんの誕生日会でお孫さんも一緒に食べてもらいたい」。毎日3度の食卓を彩ることができるよう、肉や中華総菜なども加えた100種類のラインナップをめざして商品開発を進めている。
(文・写真/衛藤真奈実)
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