週に1時間だけ働く時短看護師を実現
看護師の資格をもちながら、現在、看護の仕事に就いていない人数は約70万人。出産や子育てとの両立の難しさから離職するケースが多く、ブランク期間が長くなるほど復職のハードルも上がる。一方で、訪問看護ステーションは人材不足に悩む。高齢化が進む社会でますます必要とされる、在宅ケアを担う訪問看護師が足りていないのだ。
そんな両者を結びつけるのが、「おうちで看護」だ。従来の訪問看護ステーションは患者の情報を紙ベースで共有していることが多く、看護師はステーションを起点に患者宅へ往復する必要があった。「おうちで看護」はweb上で患者の情報が共有できるため、自宅と現場の直行直帰が可能になる。1現場・週1時間からの短時間勤務が実現できるのだ。
また、ステーション側も、常勤の人材を雇うコストやリスクを抑えられるようになる。「訪問看護ステーションの事業者は小規模経営が多く大半が赤字。それでも良い医療をめざす熱意に応えたいと思った」と藤戸氏。
ステーションへのシステム提供と、短時間勤務の看護師のマッチング、その両翼を担う同社。システムを構築したのは、SE出身の事業パートナーである宮下氏だ。IT化に抵抗感のある業界でヒアリングを重ね、自ら訪問看護の現場で1ヶ月間のインターンシップを実施。使用頻度の低い機能は省き、これまでのように紙に書いたメモをスマホで撮影して、簡単にアップロード・共有ができるようにした。
レセプト作成以外の情報共有や勤怠管理システムは、基本的に無償での提供。勤怠情報の記録から、紹介した看護師が勤務する都度、定額の報酬を得る仕組みにすることで、事業者側の負担も少なくした。
訪問看護師の研修方法や直行直帰を導入するタイミングなど課題は多いが、「訪問看護は一人の患者さんと長期間向き合える、やりがいのある仕事」と藤戸氏。訪問看護そのものの魅力も発信し、日本中で質の高い在宅ケアを実現することで、地域間の医療格差もなくしたいと考えている。
(文・写真/衛藤真奈実)