ぶれたらあかん 前に進まなしゃあない
社業もプライベートも底だった5年前から走り始めた。
経営のことから解放され、素の自分と向き合える貴重な時間だ。
週末ごとに走り、月に2回は登山へ行く。いつも一人。
より厳しい環境に身を置くほど、自分の覚悟が問われる。
ただ無心に走る。走り終えると悩みがきれいに消え、原点の自分にリセットされる。
技術承継も大きなテーマ。3月から新しい仲間が加わり、社員は7人に増えた。
経営者仲間との出会いで「人生共楽」の経営理念が生まれるきっかけになった。
覚悟を再認識し、前へ走る
週末は自宅のある鶴橋から大阪城公園を1、2周走って、戻ってくるのが習慣になっている。
「何も考えずただ走る。したたる汗が心にたまった澱も一緒に流してくれるようで」。
西堀氏はアルミ加工業の3代目。
長年1社に依存した請負仕事を続けてきたが、2008年のリーマンショックで会社が傾きかけた。
その後、鉄、ステンレス加工をやめ、アルミ1本に絞ってHPで打ち出した。
資金繰りのこと、取引先を増やすこと…。悩みが尽きることはない。登山とジョギングを始めたのもそのころのことだ。
無心に走り、山へ入ると、「ぶれたらあかん。前に進まなしゃあない」と気持ちがあらたまる。
ネットの売上げが半分を占めるまでに育ち、「人生共楽」という経営理念もできた。それでも、納期のこと、技術承継のこと、日々壁に当たる。
昨年、1日で56kmを上り下りする六甲全山縦走に挑んだ。途中何度も足が重くなり下山を迷った。だがいったん走りきると覚悟を決めた途端、うそのように足が軽くなった。「迷いが足を引っ張ることを実感した」。
走り、登ることは自分の覚悟を再確認する場だと、西堀氏。
今は自社ブランドの構築に向け、走る。
(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)