「嘘がない店」客から見える加工・調理
円状になったレジカウンター、一流ホテル出身のシェフがオープンキッチンで腕を振るう総菜コーナー、シャンパンゴールドの天井。「日本のスーパーではここだけ」のこだわりが詰め込まれたのが、10月に大阪市西区新町にオープンした高品質スーパー「ビッグビーンズWest(ウエスト)本店」。株式会社高鍋食品(大阪市西区)が運営している。
福島区野田の1号店では、110坪という店舗面積にも関わらず全国平均2倍以上の来店客数をたたき出し、「伝説のスーパー」の異名を得た。その秘密は、商品への徹底的なこだわりにある。鮮魚は漁場と直接取引し、新鮮なまま店頭に出す。加工品や調味料なども「どこでも買える大手の商品は置かない。自分たちがおいしいと思うものを手頃な価格で提供する」。これがポリシーだ。
当然、そのような商品は、知名度が低く割高だ。そこで、店のあちこちに試食コーナーを設置し、商品の特長や味をスタッフがきちんと伝えることを徹底している。「実際に食べて違いを知ってもらえれば、価格にも納得してもらえる」。この自信は、スタッフの商品知識に裏づけされている。また、大阪産業創造館の商談会「販路拡大フェア」も活用し、新しい商品を常に探求している。近年、同社の目利き力が認められ、高島屋大阪店や近鉄百貨店上本町店にも出店している。その際に採用しているのが、ユニット制という部門別の出店形式だ。高島屋には加工品と総菜、パン、近鉄百貨店には野菜や果物というように、専門性を打ち出している。
同社のポリシーは、新町の新店舗でも貫かれており、全てのコーナーにおいて「バックヤード」はなく、買い物客の見える場所で加工・調理を行う。「嘘がない店」にしたかったと、高鍋行暢(やすのぶ)社長は話す。取材中、店頭で次々と商品を手に取り、こだわりやおいしさを嬉々と説明する高鍋社長。それを聞いていた買い物客も「これはおいしかった」と一緒に盛り上がる。便利なスーパーマーケットでありながら、商店街の活気も兼ね備えている。
来年には、店舗の2Fにレストランがオープンする。レストランで味わった食材をスーパーで買って帰ることもできるのだ。「家族が安心して買い物を楽しめる店にしたい」。高鍋社長の挑戦は続く。
(大阪産業創造館 プランナー 徳中絵美)
株式会社高鍋食品