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人とのつながりで逆境を乗り越え、80歳まで働けるお店に

2026.09.17

野江内代駅より徒歩3分。都島通沿いの飲食店の2階にある「よりみちBARまぶらい」。扉を開くと、カウンターから笑顔で迎えてくれるのは「純ちゃん」「純ママ」と慕われる店主の藤谷氏だ。人通りが少ないエリアの2階という不利な立地を乗り越え、2027年3月に10周年を迎える。

藤谷氏は前職で宝石販売に携わり、全国を飛び回っていた。しかし仕事が激減したことに加え、離婚も重なり、50代で転機を迎える。「今から再就職は難しい。だったら80歳まで働ける仕事を自分でしよう」と考えたという。真っ先に思い浮かんだのは、30代の頃に仕事と掛け持ちで手伝っていたスナックだった。楽しくて8年続けていた経験から飲食店の開業を志し、大阪産業創造館の飲食店開業プログラム「あきない虎の穴」を受講した。両親が奄美大島出身という背景から、黒糖焼酎と奄美料理を提供するバーをコンセプトに据え、沖縄料理店での実習を通じて提供できるメニューの幅を広げた。また、以前から日本酒好きが高じて利き酒師の資格も取得していたことから、日本酒も提供することにした。

黒糖焼酎15種、日本酒は9~10種から選べる。

次々と店をオープンしていく同期の姿に背中を押され、住まいから近い蒲生四丁目で物件探しを始めるが、希望の広さと家賃が合う物件がなかなか見つからず、半年以上難航したという。そんな中、友人の紹介で現在の物件に出合う。親身になってくれるオーナーと家賃の安さが決め手となり、即決。「先生に報告したら『家賃が安いのには理由があるよ』と反対されたけど、自己資金だけで済みそうだったし、とにかくやってみたくて」とスタートを切った。しかし、開店後は「1年で無理だわ」と思うほど、客足が伸びない日々が続いた。

店主 藤谷 純子氏

「なんとかしなければ」と焦っていた時、お客さんの紹介で顔の広い近隣の飲食店のママと知り合い、地元の個人店グループに参加した。「ボウリング大会やイベントを通じてつながりができ、みなさんがお客さんを紹介してくれたおかげで、徐々に常連さんが増えていき、本当に助かりました」と振り返る。ようやく軌道に乗りかけた頃コロナ禍が直撃するが、協力金を受けながら乗り切った。さらに、常連客のリクエストをきっかけに「カレーの日」を始め、来店のきっかけづくりにもつなげた。コロナ禍が明けた現在も月1回続けている。

石川県に酒蔵がある日本酒「遊穂」の酒粕を使った粕汁や、奄美料理を中心とした手作りの南国ごはんが魅力。

毎年、友人のジャズシンガーを招いた周年ライブを開催し、3年前には常連客が運営するライブスペースで還暦ライブも実施した。現在は10周年に向けてウクレレを練習中だ。「人に恵まれて9年続けられたことに感謝でいっぱいです。料理するのが難しくなったら、お惣菜屋さんの料理をカウンターに並べて、おばあちゃんになってもここに座っていたいですね」。人と人とがつないだこの店は、これから地域に寄り添いながら続いていく。

「最初は失敗したと思ったけど、ここだったからこそ、近隣のオーナーさんと知り合えて今がある。どこでやったとしても人とのつながりは本当に転がっている。それをしっかり掴んで」と藤谷氏。

(取材・文/三枝ゆり 写真/三好沙季)

【 開業資金 】 300万円
自己資金300万円のみでスタート。オーナーから新品の冷蔵庫を提供してもらえた。カウンターや窓の棚などの内装と椅子などに約70万円。残りは食器などの備品や運転資金とした。

【 立地選定 】 
住まいから近い蒲生四丁目周辺で探したが見つからず、友人の紹介で近隣の野江内代で現在の物件と出合う。人通りが少なく2階と不利な立地だったが、オーナーの人柄と家賃が魅力で即決した。

【 店舗デザイン・設備 】 
元スナックの内装をそのまま活用。備え付けの黒いカウンターには、取り外しできるナチュラルなウッドを被せ、トイレ前に仕切りを付けた。内装業者が「西日が入るので窓に棚を作って酒瓶を並べたら」と出してくれたアイデアを採用し、印象的な窓になった。

【 開業までに要した期間 】 1年半 

客層の6~7割が40~50代の女性。会社員をしながら音楽活動をしている人やライブスペースを作った人など、音楽好きの常連が多いそう。

【 「あきない虎の穴」担当者からのコメント 】
藤谷さんが「虎の穴」に参加された15期は、新たに飲食店経験者向けのコースをスタートさせた時で、その後8割近くの卒業生が開業したという驚異的な開業率を達成した回でした。周りがどんどん開業していく中、焦りの気持ちもあったのではないかと思います。物件の内覧に同行した際には、急いで決める必要はないという話をした記憶があります。集客に苦しむ中、人の繋がりから常連さんをつかんでいったというエピソードからは、個人店の強みを再認識させられた気分です。まさに長く愛されるお店、素晴らしいですね!(大阪産業創造館 創業支援チーム 浜田 哲史)

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【 あきない虎の穴 】https://www.sansokan.jp/tora

よりみちBARまぶらい

店主

藤谷 純子氏

https://www.instagram.com/bar_maburai

●事業内容:南国ごはんを提供するバー経営、調理、接客
●座席数:カウンター7席・テーブル4席
●開業日:2017年3月23日