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屋号もメニューも自由、想いでつながる“ラーメンステルスFC”

2025.12.08

大阪府下とフィリピン、香港に計55店舗を展開する「豚吉(とんきち)」が1号店を蒲生四丁目に開いたのは1981年のことだ。「業務用の精肉卸事業を営んでいた父が、取引先であるラーメン店主にノウハウを教わって開業したのがきっかけです」と代表の荒川氏。以降、独立意欲の強い従業員の出店を後押しする形でフランチャイズ(FC)を中心に店舗数を増やしてきた。

豚吉本店

当初は「豚吉」の屋号でFC展開していたが、店舗間で味のばらつきが生じクレームが寄せられるようになったため、各店舗が独自の屋号とメニューで営業できる仕組みに変更した。いわゆる「ステルスFC」と呼ばれる手法で、加盟料やロイヤリティを取らない代わりに、食材の専売契約を結ぶことで独立のハードルを大きく下げた。また、従業員が独立する際は出店費用を会社が立て替え、無利息で返済できる仕組みも整えている。「父は二宮尊徳の、水を向こうに送ればいずれ返ってくるという“たらいの水”の話をよくしていました。まずはFCオーナーにしっかり儲けてもらうことが大切だと考え、それを実践していました」。

FC店もまきこんだイベントでモチベーションを高めている。

近年は人手不足や高齢化に伴う後継者不足の影響もあり、店舗数が50店を超えたころから足踏みが続いている。荒川氏は、そうした逆境の中で「いかに100店舗体制を実現するか」を模索し、直営店での検証を重ねてきた。その答えが「24時間営業」である。「24時間営業にしても家賃は変わりません。うちの店は昼間よりも夜間の売上げの方が大きいので、その分利益が上積みされ収益性が高まるのです」。実際に郊外の直営店で11時~24時営業を24時間営業に変えたところ売上げが倍に伸びたという。

代表取締役 荒川 貴雄氏

ただし、そこで課題となるのが人手の確保だ。これまでも外国人の採用は行ってきたが、今後はさらに本腰を入れるべく特定技能人材の登録支援機関の認定を近く取得する予定だ。FC店オーナーをめざす人にとっての不安材料である「儲け」と「人材」の課題を解消することで、今後5~10年以内に府内で100店舗を目標に掲げる。

手の動き一つひとつに積み重ねた日々の経験がにじむ。

社内では商品開発のためのコンテストの開催やFC店舗も巻き込んだ焼飯の人気投票を行うなど、スタッフのモチベーション向上と一体感を醸成する取り組みにも注力している。「同じ思いを持つ仲間が増えてきたことが何よりうれしい」と満足そうな笑みを浮かべる荒川氏。先代が作った「味」と「支え合える温かい風土」を土台に、今、「第2創業」の覚悟で新たな一歩を踏み出そうとしている。

「社員同士が互いに支え合える、温かい組織をめざしている」と荒川氏。

(取材・文/山口裕史 写真/福永浩二)
※掲載写真は、編集部にて撮影したもの以外に、取材先企業からご提供いただいた写真も含まれています。

株式会社アラカワフードサービス

代表取締役

荒川 貴雄氏

https://arakawa-fs.jp

事業内容/ラーメン店の運営、プロデュース