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【飲食店開業への道】人気の串かつ店を承継し、地元の活気を生み出す

2025.02.27

地元・放出で愛され、34年目を迎えていた串かつ店「わらべ」。夫婦二人で営んできた店が2018年春、閉店することとなった。当時外回りの営業をしていた井坂氏は、取引先のひとつである「わらべ」が閉店すると聞き、大きく心が揺らいだ。時代の流れで閉店を余儀なくされ、地元の活力までも失われていく様子をいくつも目の当たりにし、やるせない思いが募ったという。

井坂氏自身もまた、人生の転機を迎えていた。独立起業するべきか、あるいは現在の会社に居続けるべきか。人生の残り時間を意識し、迷っていた時期。決意を固め、お店を引き継ぎたいと店主に申し出た。驚かれつつも快諾を得て、代替わりオープンに向けての準備がはじまった。

代表 井坂 哲哉氏

過去に飲食店での勤務経験があり、調理師免許も取得していた井坂氏。準備期間はわずか3か月と短かったが、新たに簿記の資格を取得し、大阪産業創造館による飲食店開業のためのプログラム『あきない虎の穴』にも参加した。「来店数や原価率など計数管理や資金繰り、マーケティングなど学ぶべきことは多岐に渡ります。やる気と根性だけでは難しいですから。経営者のつながりができたことも心強かったですね」。

店舗や厨房機器などは先代からそのまま引き継ぎ、日本政策金融公庫からの融資400万円と自己資金300万円を準備して、ゆとりある運転資金を確保してのスタート。唯一、予想外だったのが先代の言葉。「全部教えてあげるから、君一人で頑張りなさい。私も手探りでやってきたから君にもできる。私がカウンターに立てば、君が主役になれない」。

シャッターを降ろした店内で、先代夫婦から秘伝ソースや揚げ衣のつくり方を学ぶ日々。一緒にカウンターに立ち、学びながらの独立をイメージしていたため、単独での開業は緊張したと井坂氏。「やると決めたら、あとは登山と同じ。目の前の一歩一歩を重ねていくだけです」。無我夢中でお店を回すうち、現在7年目。カウンター16席の店内は、30年以上通い続ける常連をはじめ、地元客で今日も賑わっている。

また、店舗営業の傍ら、『8710(ハナテン)グルメ』と名付けたグルメチャンネルも運営。周辺の飲食店情報をSNSで発信している。「近隣の飲食店さんはライバルではありません。互いに協力し、お客さんの母数や来店頻度を増やせれば」。地元で愛されるお店を、引き継ぐことで守ってきた井坂氏らしい取り組み。エリア全体を巻き込む挑戦はこれからも続いていく。

(取材・文/北浦あかね 写真/福永浩二)

【 開業資金 】 700万円
日本政策金融公庫からの融資400万円+自己資金300万円

【 立地選定 】 
創業昭和59年の老舗串かつ店を引き継ぐ(放出駅より徒歩5分)

【 店舗デザイン・設備 】 
カウンターだけの小ぢんまりとしたお店

【 開業までに要した期間 】 3か月 

【 「あきない虎の穴」担当者からのコメント 】
老舗の店舗を引き継ぐ前提で「虎の穴」のPROコースに参加した井坂さん。経営者や店長などの参加が多い中、開業に必要な情報をできるだけ多くを吸収しようという気持ちが受講態度からも見て取れました。開業後は、地域を盛り上げようと地元のお店を紹介するSNSを立ち上げたり、開業希望者をサンソウカンに連れてきてくれたり、ご縁と繋がりを大事にする活動がお店の繁盛に繋がるという好循環を生み出している気がします。通勤沿線なのでまた寄らせてもらいますね!(大阪産業創造館 創業支援チーム 浜田 哲史)

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【 あきない虎の穴 】https://www.sansokan.jp/tora

串かつ わらべ

代表

井坂 哲哉氏

https://kushikatsuwarabe.therestaurant.jp

事業内容/串かつ店の経営
座席数/16席
開業日/2018年8月19日