Bplatz press

株式会社ティグが贈る、チタン製車いすが支える「自立」と「豊かな生活」の新たな定義

2024.02.02

事故や先天性の障がいで下半身にハンディキャップがあっても「自立して生きたい」と働きながら一人暮らしをしている人やスポーツを楽しむ人にとって、車いすは体の一部のようなもの。自分で車輪をこぐことが前提のため、医療・介護用車いすに比べ軽さや強度が求められる日常用車いすを35年以上製造しているのが株式会社ティグだ。

他社の日常用車いすはアルミかスチール製だが、同社は軽くて耐久性が高いチタンを使用し、車いすブランド「Titania(チタニア)」を展開する。長時間使っても疲れにくいことが魅力で、セミオーダーで座面や背角度が選べ、好みに合わせてハンドリムやスポークのカラーなどをカスタマイズできる。錆びないためメンテナンスがとても楽なことも特長だ。

1997年に競技用車いすのバスケットボール用、テニス用、マラソン用の3車がグッドデザイン・中小企業庁長官特別賞を受賞した。ユーザーのほとんどが長年愛用しており、「修理でお預かりする車いすは、長く使われているのにとてもきれいな状態。人生の相棒として大切にしてもらえて嬉しい限りです」とマネージャーの小澤氏は語る。

マネージャー 小澤 隆一氏

同社は創業した1979年よりチタン製の熱交換機器を製造。早くから先代が「軽く・強く・錆びない夢の金属であるチタンで、世の中に役立てる製品を生み出したい」と新製品開発に取り組み、コア技術であるチタンパイプの溶接を活かした日常用・スポーツ用車いすや自転車フレーム、OEMで消防用はしごの製造を開始した。「医療・介護専門の会社ではないため、当初、開発のための調査や販路開拓で苦労したようですが、地道に展示会へ出展を続けることで販売代理店との取引を拡大していきました」。

1996年のアトランタパラリンピックでは競技用の「Titania」を使用した室塚一也選手が車いすマラソンで銀メダルを獲得。注目度が高まったことから実際に触れて軽さや乗り心地、操作性を実感してもらえるよう、本社近くにショールームをオープンした。さまざまなパーツやオプションも確認できると好評を得ている。

現在は韓国への輸出が増加している。きっかけは6年前の国際福祉機器展で韓国の販売代理店がチタン製の軽さと強度に興味を持ってくれたことだった。「韓国は朝鮮戦争の影響で脚にハンディキャップはあるが自立している人や働いている人が多く、日常用車いすの需要が高いことがわかりました」。通常納期は1か月半だが、受注が2倍になったため、3か月必要になった。

いきいきと自立しているユーザーや車いすスポーツの選手の声に耳を傾ける中で、真剣に生きること、生活やスポーツを楽しむことの大切さを学ぶことができた。「車いすで『もとの生活に戻ること』をゴールにするのではなく、体だけではなく心も支えて人生を豊かにする車いすを提供したいと理念が明確になった。先代である亡くなった父は職人気質で、想いはあっても具体的に会社の理念やビジョンを伝え切れていなかったように思う。今後は社内外にどんどん発信していきたい」。そのためにも社員との理念の共有やホームページのリニューアルにも取り組み、活動的な生活をかなえるチタン製車いすの魅力を伝えていくつもりだ。

カラフルなパーツが日常を彩る新製品。チタンの特性を活かした虹色に輝く発色加工の側板やスポークも人気がある。

(取材・文/三枝ゆり)

株式会社ティグ

マネージャー

小澤 隆一氏

http://www.titanium-tig.com

事業内容/チタン製の熱交換器・車いす・自転車フレーム・消防用 はしご等の製造・販売