松本鉱泉の代表が明かす相棒と紡いできた成長と挑戦
大阪産業創造館プランナー 中尾 碧がお届けする
社長だって一人の人間、しんどい時もあります。そんな時にモチベーションの支えとなり、「一緒に頑張っていこな!」と声をかけたい“人”または“モノ”がきっとあるはずです。当コラムでは社長のそんな“相棒”にクローズアップ。普段はなかなか言葉にできない相棒に対するエピソードや想いをお伺いしました。
【 vol.26 】松本鉱泉株式会社~常に「平常心」を忘れず、優しく見守り続けてきた相棒~
松本鉱泉株式会社の代表である三木氏は同社の3代目。社名の「鉱泉」というのは、初代の祖父がラムネ飲料の製造販売を行っていたことに由来する。創業当初はラムネ飲料の卸売りを主業としていたが、初代社長である三木氏の祖父と先代社長である母が徐々に業態転換・取引先の拡大をし、会社規模は大きくなっていった。一方で家庭が事業によって左右されることあり、幼少期の三木氏は家業へ絶対に入らないことを決めていた。
大学を卒業後は大好きだった英語の道へ進み、英会話の講師として20年以上のキャリアを重ねた。仕事は順調でとても楽しかったが、同時に社長を務めていた母が高齢化に伴い体力や気力が落ちてきていたことが気にかかっていた。そんなある日、母から「会社に入って自分をサポートして欲しい」という声がかかり、英会話講師業もしながら週3日程度同社で勤務し始めた。しかし少しずつ松本鉱泉での仕事も自分の覚悟も中途半端に感じるようになり、「やはり英会話業に絞ろうか」と心が揺れていた。
入社して3か月ほど経った頃、「経営者として跡を継いでほしい」と母から打診があった。母の本気を汲んだ三木氏は勤務をフルタイムにし、まずは当時の専務から主に経理関係の業務を本格的に引き継いだ。それまで帳簿も見たことがなく全くの未経験だったが、一生懸命に帳票やお金の流れや取引先について学んだ。三木氏の覚悟を感じた母も重要な業務をどんどん任せるようになった。
担当業務が増えると同時に、会社が持つさまざまな課題も見えてきた。組織として成長していくためには、従業員みんなが働きやすい環境づくりが大切だと考えるようになり、就業規則などのルール作りへ着手した。しかし先代である母とは意見が合わず、何度も衝突。それでも諦めずに進めてこられたのは、入社当初から積極的に対話を重ねてきた従業員たちがいたからこそ。その中でも特に津川氏は年齢も近く、しっかりした報連相と素早いアクションで三木氏にとっては100%安心して話せる相棒だ。現在、主に劇場向けの提案営業を担当する津川氏は、しんどいことがあっても常に平常心。その弱さや不安定さを見せない姿勢が、会社の課題を乗り越える際に心強かったと三木氏は振り返る。2020年に始まったコロナ禍でも、立ち止まることなく、劇場の営業再開に向けて顧客をサポートする姿は三木氏だけでなく他の従業員も勇気づけた。その後、三木氏は中期経営計画を作成する際にも、津川氏を策定メンバーの一人として参加させ、会社をより良くするための道筋をともに作り上げた。中期経営計画を策定した経験は、同社の中に自発的に考え、動くという習慣が根付くキッカケにもなった。
そして2022年6月、三木氏は社長へ就任。社長という位置からは、これまでの後継者、従業員という立場では見えていなかったモノが見えてきたという。会社の舵をどう切っていくかを決めることも社長として重要な役割だが、三木氏には、どんな時でも平常心でしっかりサポートしてくれる相棒と、「良い会社にしたい」という三木氏の想いに共感して行動する従業員がいる。支えてくれる仲間たちとともに、「心根の良い、やさしい会社」の実現に向けて今日も力強く歩む。
(取材・文/大阪産業創造館マネジメント支援チーム プランナー 中尾 碧)
松本鉱泉株式会社
代表取締役社長 三木 祐香子氏
営業部次長 津川 昭洋氏
事業内容/飲料・食品の卸売り納品、自動販売機の設置・補充・管理、ハンドメイド商品・化粧品等のネットショップ運営