テニスの上達法、AIコーチが指導
1人のコーチが10人程度の生徒を教えることの多いテニススクール。打ち方をアドバイスしたとしてもそれぞれの受け止め方は異なるし、体の動きを見せるだけでは理解しづらいところもある。こうした課題を克服しようとTAFDATAが開発したのが、AIを活用した『TennisLabo』だ。
タブレットを使って生徒が球を打つ様子を動画で撮影し、骨格の動きを推測してフォームを解析。コーチの動きとも比べながら、どこをどのように修正すればよいのか練習法を指導もする。5月中旬にアプリをリリースし、デモ版含め大手テニススクールなどで順調に採用が進んでいる。
山田氏は大阪大学工学部ではAIを専攻。在学中に、教育にAIを活用するベンチャー企業の経営に参画した。例えば数学であれば1次関数を理解できて初めて2次関数に進めるというように学びのステップがあり、その手順を踏み外していないかAIに解析、マネジメントさせることで成績向上につなげる仕組みで実績を上げた。色々なAIの応用がある中で、AIがもっとシンプルに人間に貢献できる領域があるのではと考え、「明確に数値で結果が出るスポーツ」に着目したという。
思いつく限りのスポーツについて市場の可能性、AI解析との相性の良さなどを総合的に評価し、可能性を見出したのがテニスだった。テニスコーチやスクールに通う生徒の生の声を集めるとともに、自ら複数のテニススクールに通い実際のニーズを探った。またスクールの協力を得てAI解析に必要なデータの蓄積も進めていった。実証実験を行ったスクールでは「コーチの経験や知識といった属人的な要素で出る指導のばらつきをなくすことができる」と高い評価が得られた。
山田氏は高校2年生の時にロボットコンテストの世界大会で2位に入賞した経歴を持つ。大会で知り合いになった友人は入賞を逃したものの、その後弱点だったハードについても学び、のちに山田氏のはるか先をいくロボット技術者になった。そのことから「人は平等に機会と情報を個別に与えられればもっと早くに能力を開花できる」と気づかされ、「(AIを活用して)人類の可能性をアップデートする」という現在の経営理念につながっている。
今後はTennisLaboのデータを更に集め高度で迅速な解析につなげていく一方、TennisLaboで培った技術、ノウハウを教育や医療の世界にも生かしていこうと考えている。「Amazonが本から通販の世界の覇権を握っていったように、TAFDATAはテニスからAIによる運動解析で世界を攻めていきたい」。そんな野望を抱きながら自身もアップデートし続けている。
【 2025年 自社はこうなる 】
テニス事業で成功し、運動神経の解析を進め、運動音痴を解消する。
(取材・文/山口裕史)