料理人歴25年の店主がチャレンジする飲食店の新しいカタチ
【起業家図鑑】大阪産業創造館 創業支援チームのプランナーが月替わりで起業家を紹介する連載コラム。起業を志したキッカケや、困難に直面したとき乗り越えた方法、また事業を軌道に乗せるために必要なことなど。一歩先をいく先輩起業家の体験談をプランナー目線で紹介します。
【起業家図鑑】vol.33 料理人歴25年の店主がチャレンジする飲食店の新しいカタチ
「生まれ育った東大阪で地域に愛されるお店を作りたい」という店主の想いが詰まったお店「CHINA 進(チャイナしん)」。
店主の川中さんが、25年の料理人歴で培った技術・知識・経験をふんだんに盛り込んだ、本格的な中国料理をリーズナブルに提供するお店だ。
セルフオーダーやセルフ飲み放題制を導入し人件費を抑えることで、本格的な中国料理でありながらリーズナブルな価格を実現し、開店1年で既に常連さんでいっぱいの、まさに地域に愛されるお店となった。
しかし、順風満帆な経営状況を継続してきたというわけではなかった。
開店したのは、緊急事態宣言が発令される半年ほど前の2019年の11月。「さあ、これから」というときだった。
しかし、川中さんは焦らなかった。
要請に従い閉店する一方で、店を回すだけで手いっぱいで手をつけられていなかったテイクアウト販売をスタート。スタッフと手分けして近隣にチラシをポスティングするなど周知し、平常時とまではいかないが、店を維持するには十分な売上を獲得することができた。
店舗の半径300メートル以内は郵便局、商工会議所、図書館、病院などがある割に店の数が少ない。その上近隣のほとんどの飲食店が休業、結果食事難民の救世主となったのである。
通常営業に戻った後もテイクアウト販売は順調で、店内飲食+αの売上として積み上がり、想定以上の売上を維持することができた。
二度目の緊急事態宣言発令後も、テイクアウト需要に対応し、ランチタイム限定のお弁当、おうちパーティ需要を見越したオードブルなど、新しいメニューを導入することで大きな打撃は受けていない。
さらに、この春にはキッチンカーの購入を予定している他、中食・内食への参入を見越した加工食品の開発にも着手するなどチャレンジは続く。
店内飲食以外にもお客さんに食事を届ける方法はいくらでもある。これまでの常識が立ち行かなくなった今、川中さんのチャレンジは、飲食店経営者の希望の光になるかもしれない。
(取材・文/大阪産業創造館 創業支援チーム プランナー 浜田哲史)