「もったいない」を「美味しい」に規格外野菜が生まれ変わる
割れや傷などを理由に、流通されず捨てられていく野菜たち。「味は遜色ないのに、なぜ捨てられなければならないの?」。そんな思いから生まれたのが開屋本舗のオリジナル野菜チップス「coco-vege(ココベジ)」。
使われているのは、えびいも、人参、さつまいも、じゃがいも、とうもろこし、オクラ、トマトなど、すべて国産、多くは大阪産(おおさかもん)の野菜。
規格外で廃棄される野菜をプレミアムココナッツオイルで低温フライし、美味しく蘇らせている。
前身とも言える商品が開発されたのは、今から7年前。
小さなたこ焼き店から出発した開屋本舗は「焼きたてこそ、たこ焼きの命!」と、作り置きをしないことを創業以来のポリシーとして貫いてきた。
かといって、注文を受けてから焼いていたのでは、せっかちなお客が逃げてしまう。すぐに提供できる焼きたてを用意し続けると、どうしても廃棄が多くなり、多ければ一日1,500個のロスが出たこともあった。
なんとか捨てずに活用できないかと、せんべいに加工したり、団子のように串に刺し素揚げした商品を作ってみたが、どれも売れ行きはいまひとつだった。
試行錯誤の末、真空フライヤーを導入。たこ焼きを丸ごと揚げた“おかき”は話題性があり、ニュースにも取り上げられたものの、大きな実売にはつながらなかった。
設備投資が重くのしかかり、順調に複数展開していた店舗も手放すことに。「飲食業しか経験がなかったから、パッケージデザインや流通、PRなど、わからないことばかり。負債を抱え、本当に厳しい時期でした」。
失意の日々の中、新たな光となったのが、真空フライヤーを使った野菜とココナッツオイルの組み合わせだった。
真空フライ製法は栄養素を残しながら水分だけを飛ばすことができる。
その特長を活かした野菜チップスは、加熱も水分も不要でそのまま食べられ、焼き菓子のように保存も可能。酸化に強いココナッツオイルには独特の栄養もあり、何より、味がいい。
「食材廃棄をなくすことと美味しさ。その両方を備えていることが大切なんです」。
畑にも直接足を運び、賛同してくれる農家から仕入れる規格外野菜。数年前には自ら畑を借りて、栽培にも挑戦した。農家の苦労を痛感し、野菜への愛着が一層増したという。
「虫食いや傷があっても味や栄養は同じ。一生懸命に育てた農家さんの想いを知って、ほんの小さなムダさえ見逃せなくなりました」。
包装の過程で生まれたチップスの破片は、粉末にしてホットスムージーの素に。使用済みのココナッツオイルは石鹸に。「もったいない」を原動力に、新たな価値を生み続けている。
(取材・文/北浦あかね 写真/福永浩二)