ものづくり

絆創膏からフェイスペイントシールという新発想

2018.11.12


頬に日の丸、腕にロゴマーク――。スポーツやイベントを盛り上げるツールとして、近年よく見かけるようになったフェイスシール。同じ国、同じチームを応援する仲間としての一体感を高めるアイコンとして定着してきている一方、肌に直接貼りつけるため高い安全性が求められる。

そこで東洋シールが開発したのが、絆創膏の素材を使った「フェイスペイントシール」。一般には印刷できる素材に医療用の糊を塗布加工するケースが多いなか、「うちのシールは医療用の素材そのものなので安心感が違う」と代表の杉本氏は自信を見せる。

ただし絆創膏の素材は印刷適性がないうえ、ベース色が肌色で色の発色が悪く、さらに肌に沿って伸縮する素材なので加工も難しい。3年程の試行錯誤の末、ようやく問題を解決し、量産化を実現した。「アナログ素材の不自由さをデジタル技術をうまく活用することで課題が解決できました。」と開発担当の中沢氏は説明する。

同社はシール・ラベル印刷業者として来年度60期目を迎える。シール印刷機による大ロット生産に加え、オンデマンド印刷による小ロット多品種生産の両面で対応できる強みがあるほか、何よりの特徴は「素材開発」に積極的に取り組んできた点だ。

「これまでトウモロコシを原料としたバイオマスのシール、ロール状ではなくシート状にすることで新しい用途を創ったマスキングシールなどを手がけてきました。その素材開発の第3弾として打ち出したのが安心安全を前面に出したフェイスペイントシールなんです」と杉本氏は強調する。

たとえば阪神タイガースのマスコットキャラクターや応援グッズのシール、スポンサー契約を結ぶセレッソ大阪のエンブレムや選手番号のシールなどを制作。さらにプロスポーツに留まらず、アマチュアスポーツや音楽ライブ、各種イベント用途での制作、あるいは珍しいケースでは妊婦のお腹に貼るマタニティフォト用のシールを手がけたこともあるという。

加えて現在は「紙の世界」というブランド名で紙製品の提案事業にも力を入れる。一例では木材を極薄のシート状に加工する特許技術を活かし、伊勢神宮の神域内から採れた杉(御山杉)をケースに使用した消しゴムを老舗メーカーと共同開発し、ヒット商品となっている。

「これからは開発した素材の用途開発にも力を入れていきたい」と両氏。特徴ある素材を開発してきたことで、顧客から「こんな用途で使えないか」と逆提案を受けるケースも多い。「フェイスペイントシールについては今後、展示会を盛り上げる販促ツールや店舗の来店促進ツールなど、応援以外の用途にも広げていきたいですね」と意欲を見せる。

代表取締役 杉本哲也氏(右)、中沢秀和氏(左)

(取材・文/高橋武男)

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今回の展示会では、おなじみのエンボスや箔押し加工から、高精度な立体印刷、球面への印刷技術までの幅広い特殊印刷技術を持つ企業、メディアミックスを活用した宣伝・広報支援を展開する企業、業界に特化した強みを持つ企業などが出展します。

東洋シール株式会社

代表取締役 杉本 哲也氏
中沢 秀和氏

https://www.toyo-seal.co.jp

事業内容/各種シール・ラベルの企画・製造・販売、自社ブランド「紙の世界」の運営