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【長編】海外進出が会社の体質を変えるきっかけに高付加価値商品でタイ市場へ

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2013年1月、初めての海外現地法人をタイに設立した。日本から高付加価値品に特化して輸出販売し、東南アジアで「Nakayama」ブランドの認知をめざす。なぜこの時期の進出なのか。現地の競合企業と比べ10倍の値段で果たして勝算はあるのか。取締役の中山真貴氏に聞いた

―どのような製品をつくっているのですか?

当社は紙やフィルムなどの薄い素材を打ち抜くためのトムソン刃と呼ばれる刃物を製造しています。刃物はベースとなる木の土台に埋め込まれ、木型となって菓子箱やスマホの表面保護フィルムなどの抜き型として使われています。煙草の箱だったら1回のプレスで20枚ほど抜くことができます。その他に自動車用部品や電子部品の打ち抜きにも使われています。
まず、幅24ミリ程度の生材と呼んでいる鋼を購入して、全体を固くするために焼き入れをします。そして刃先を磨いた後、さらに刃の部分だけもう一度焼き入れをして固くします。全体に焼き入れをしただけだと割れやすくなりますが、こうすることによって耐久性が高まります。製造するための機械はすべて自社で作っており、他社にはできない高付加価値製品をつくっています。たとえば、スマホの表面保護フィルムの場合、切ったところに少しでもゆがみが出ると空気が入り込んでしまう。「中山の刃物でしか打ち抜きはできない」と言ってくださるお客さんもいらっしゃいます。

―会社を取り巻く経営環境はどうですか?

5年ほど前までは景気の浮沈にかかわらず売上げが安定的に推移していました。紙箱などはいわゆる消費財で末端の消費量は大きく変わらないからです。そのせいもあり、会社の風土も「今やっていることをやっておけばいい」という感じで、新たなことにチャレンジする精神に欠けていました。正直、どっぷりぬるま湯に浸かっていたという状態でしたね。さらに5年ほど前に値上げをした直後にリーマンショックがあり、ダブルパンチで売上げが落ち込み、菓子、たばこ向けなどのロットの大きい仕事は海外に流れ、国内に残っているのは小ロット品ばかりになっていました。

―海外企業との取引はいつごろ、どのように始まったのですか?

15年ほど前から海外への輸出は始めていましたが、どうやって本格的に取引を始めていいのかがわからなかったので、日本の商社を介して、現地の代理店を経て最終的にユーザーである木型メーカーに納めるやり方に注力していました。そうすることで資金回収リスクと為替リスクを回避できるねらいもありました。

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―商社を介したやり方に問題は?

当然、ユーザーにとって購入価格は高くなるし、当社にとっては利益が薄くなる。なによりも問題は、ユーザーからの要望が間の会社を介して送られてくるので、こっちに話が来るころには、まったく違う内容になって伝わっていたり、それでトラブルにまで発展することがありました。とはいえ、国内の売上げの落ち込みを補うように輸出比率が増えていたので、直接取引できるタイミングをうかがっていました。

―今年1月にタイに現地法人の販売会社を設立していますが、なぜタイに?

市場のないところに出るわけにはいかないということで、アジアの中で他国と比べて取引につながりそうな先が多いのがタイだったんです。また偶然にも、国内で競合するもう1社がタイに工場を出すという情報が流れてきました。ターゲット層は違うものの、やはりバッティングするところが出てくる。先んじられるわけにはいかないですし、とにかく先手を打ちたいという思いもありましたね。
昨年6月に、大阪市の海外展開支援サービスを利用してタイの展示会にブースを出しました。実際に行ってみると手応えを感じました。タイは東南アジアの真ん中に位置していて、他のアジア諸国との取引も期待できる。しかも、街は若い人であふれ、活気があり、今後の発展の可能性を感じ、進出を決断しました。

―進出にあたって最も苦労したことは?

合弁先を探すのに苦労しましたね。タイで販売会社を独資で設立する場合、1億バーツ(約3億円)の資本金が必要なんです、我が社の場合、合弁で出すしかなかった。合弁の場合、自社資本は49%までで残りの51%は現地企業に出資してもらわなければならない。日本の取引銀行の現地法人にお願いしましたが、出資比率は当社の出資比率を超えない範囲でということで48%出資するということでした。残り3%を、材料を仕入れている取引先の現地法人にお願いして引き受けてもらうことができました。
 もう一点、だれを現地の駐在社員として行かせるか。これも頭を悩ませましたね。展示会に同行してもらった営業担当社員にお願いできればと考えていましたが、彼には小さい子供が3人いて、しかも3人目は生まれたばかり。社内でも一番お願いしにくい人物でしたし、社内でもまさか彼が行くことはないだろうと思う人も多かったようです。でも思い切ってお願いしてみると、気持ちよく引き受けてくれました。このことで、社内には、だれでも海外に行く可能性はあるんやと、変な空気が漂っていました。(笑)

―そこからどのような進展を?

展示会出展の時に紹介してもらった通訳の方が、法人を設立するならコンサルタントがいるだろうということで紹介してくれました。コンサルタントといってもたくさんいますが、決め手になったのは、そのコンサルタント自身がかつてタイで現地法人を立ち上げ、現地のトップを務めた経験を持っていたからなんです。その経験から今やるべきこと、やらないほうがいいことを率直に教えてもらうことができました。
事務所は上層階がマンションになっているビジネスセンターを選びました。バンコク中心部は渋滞がひどいのでその影響を受けにくいところで、かつタイ各地に配送するために高速道路へのアクセスの便利なところという条件で選びました。進出を考えてから設立まで半年というスピードでしたが、今思うとタイは比較的進出しやすい国だと実感しましたね。

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―現地に製造拠点を設けるという考えは?

多くのものづくり企業は量産品を安く供給しようということで海外進出を考えてらっしゃいますが、当社の場合は安い刃物で勝負しようとは思っていません。むしろ、日本国内でも高付加価値に分類される製品に限って勝負する戦略をとっています。そうでないと、他社と区別がつかず、価格競争に巻き込まれてしまうからです。だから日本で生産したものを持っていく。事実、当社の刃物は現地で売られている中国製の刃物の10倍ほどの価格ですが、量産品をつくっている得意先でも一部高級品も扱っているところがあります。「全体の刃物使用量の10%でもいいからうちの刃物を使ってみてください」という提案で営業をしています。

―現地に進出しての手ごたえは?

ユーザーはメーカーの担当者が直接来てくれるということをすごく喜んでくれています。当社にとっても、営業担当者は当社の製品に非常に自信を持っているので、なぜ他社製品に比べて価格が高いのかを直接説明できることがありがたいですね。
間接的な効果も大きいと感じています。長年ぬるい状況に浸かっていた社員にとって、うちは優れた製品をつくっていて、高いけれどもしっかりと提案すればアジアでも勝負できるということを認識し、自信につながっているのではないでしょうか。
現在、駐在している社員は、2人のタイ人をマネージする立場になり、この半年で非常に成長しているのを感じてます。現地に拠点ができたことで日本からより多くの社員に現地に出かけてほしいし、「自分も行くかもしれない」という機運が社内に生まれました。以前は英語が話せる社員でないと行かせられないと考えていましたが、語学うんぬんよりやる気のほうが大事だということにも気付いてもらっています。全員が「いつでも行きますよ」と思ってくれるような会社にしていきたい。
現在の目標は2期目に黒字化することですが、現地の大手木型メーカーとも取引が始まり、必ず達成できると確信しています。

2013年08月09日
株式会社ナカヤマ
取締役統括本部長  
中山真貴氏
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