Bplatz press

【あぁ、麗しのファミリービジネス】Vol.4 「継ぐ側と継がせる側の覚悟が未来をつなぐ」

2013.01.10

 「継ぐ側と継がせる側の覚悟が未来をつなぐ」

私が「ファミリービジネスの事業承継」をライフワークとして追いかけるキッカケになった社長さんがいらっしゃいます。生野区で製造業を営む二代目社長Aさん。今から7年ほど前、大阪産業創造館で実施した経営者対象の事業再建勉強会を担当していた時のこと。初回の自己紹介の際、Aさんはこの勉強会に参加した理由を、全身から絞り出すような震える声で、こうお話しされました。

「長引く不景気で当社もずっとジリ貧の状態が続いています。僕は親父の会社を継いだ二代目で、僕にも今大学生の息子がいます。でもこのままだと、とてもやないけど息子に継いでくれとは言えない。だから、将来、息子の口から『親父の会社を継がせてくれ』と言ってもらえるように、あと二年の間に死に物狂いで会社を再建しておきたいんです」。

それはもう、その場にいた全員が息を飲むような時間でした。今でもその時の空気をビビッドに思い出せます。私自身の実家も家業を営んでいるので、父や祖父や弟の姿がAさんに重なったのかもしれません。それ以来、経営者が後継者にバトンを渡す事業承継に強い関心を抱くようになりました。

全中小企業の95%がファミリービジネスという日本では、事業承継は家族の問題。日本の後継者不在問題が語られるときに相続や税制面の対策なんかがよく挙げられますが、戦術や制度だけでは解決できないと思っています。なんせ家族ごとに抱える事情が違うし、「会社を継続したい(継いでほしい)」と「子どもに苦労させたくない(継がせたくない)」など、経営者である前に親としての愛が複雑に絡み合っているんですから。でも一方で「祖父がつくった会社を俺の代でつぶすわけにはいかない」や「いい状態で子供に引き継ぎたい」など、継ぐ側も継がせる側も家族のために覚悟を決めることこそが窮地を乗り越える原動力になっているのは間違いありません。

そうそう、最後に前述のAさんの近況を。あの時の決意表明を見事に実現。数々の障壁を乗り越え会社も再建され、最近では息子さんも会社に入られたそうです。

yamano

大阪産業創造館

Bplatz press編集長/チーフプロデューサー

山野千枝

http://www.sansokan.jp/

本紙「Bplatz press」編集長。数多くの中小企業を取材する中で、家業を受け継ぎ事業を展開する経営者の生き様に美学を感じる一方で、昨今の後継者不在問題を憂いて「ファミリービジネスの事業承継」をテーマに、現役の後継社長とともに、関西学院大学、甲南大学で教鞭をとる。実家も四代続くファミリービジネス。