熱い魂が伝播する中小企業応援サイト

熱い魂が伝播する中小企業応援サイト

【長編】経営理念は「Impact On The World」世の中を変える会社になる。

con_head

大学生の時にすでに事業を2度起こし、在学中にIT関連の受託制作会社を立ち上げた岩田氏。その後、自社制作ソフト広告効果測定システム「ADEBiS」、ECサイト構築ソフト「EC-CUBE」という異なるジャンルの製品でシェアナンバーワンを獲得した。「Impact on the world」を経営理念に掲げ、「世の中を変える会社になって、より多くの人に夢と希望を与えたい」と語る岩田氏に新たな事業に挑み続ける原動力について話を聞いた。

――ご両親が商売をなさっていたんですか?
母はお好み焼屋をやっていたので、自分で稼ぐということに肌身で触れた部分はありますね。父が中小製造業の経営者をしていて、間近で経営の苦労も見てきました。自ら主体的に動かなければという考えはそんな経験が影響しているのかもしれません。

起業家の5つの要素を聞いたことがあります。親が企業家である。若くして海外経験を持った。死にかけた。強いコンプレックスがある。そもそもDNAで決まっている。アリの集団は誰に教えられたわけでもなく、集団でまっすぐ歩こうとしますが、中にその道からそれるアリがいますよね。列からそれるアリがまさに起業家なんだと思います(笑)。

――大学生の時に起業をされたということですが。

大学の授業に出てみて、驚きました。知的好奇心を満たしてくれる世界だと思い込んでいたのですが、どこを探してもそれはなさそうでして。それで入学して2週間で休学手続きをとったんです。グローバルで活躍できる人材になりたいと漠然と思っていたので、アルバイトでお金を貯めて、夏休みにバックパッカーとしてアジア、アメリカを4カ月ほど回りました。いつか仕事で世界を飛び回るような生き方をしたいと強く思うようになりました。

帰国して飲食店でアルバイトを始めたのですが、お店はまったくはやっていませんでした。従業員がやる気のない人ばかりで。もどかしかったですね。自分が辞めるか、みんなを辞めさせるかという選択になりまして。従業員も面白くなさそうだし、オーナーも苦しい、お客さんも満足していないわけですから。僕のテーマは主体性ですから、自分に何ができるかということを考えると、自分がやるしかないと。それで買い取ったわけです。ところが1年で失敗しました。よく考えれば、自分で料理なんかやったことないのに、飲食店をやってうまくいくわけがない。自分で何か仕事を始めるなら、まず自分が技術を身につけないと、と思い、コンピューターの勉強を始めました。

――大学は文系(関西学院大学商学部)ですよね。技術者としての適性はあったのでしょうか?

いや、まったく。でもやるからにはとことん追求しようと思う方ですね。本質を学んだ方がいいと考え、サーバとかネットワークインフラ周りのことを独学で勉強しました。やっているうちに自分の部屋のパソコンが10台にまで増えていました。この道でそこそこやっていける自信がつきました。その技術を持ってIT会社で丁稚をしようと思ったのですが、そこにいる人たちのレベルがあまりにも高くて、これはもうとても太刀打ちできそうにないとあきらめました。だめだと思ったら撤退は早い方なんです。

とはいえ、せっかく培ったスキルを生かして何かできないかと思って始めたのがインターネットを使った旅行情報ビジネスでした。バックパッカー、飲食店でのサービス業の経験とITを組み合わせたわけです。「地球の歩き方」のインターネット版のようなイメージです。多くの人が書き込みできるようにして、ツアーを企画するというようなところで事業化できるのではともくろんだのですが、結局収益源を見つけることが出来ずにやめることになりました。それが21歳の頃でした。

その後、IT関連のホームページ制作などの受託開発の仕事なら何とかできるだろうとロックオンを一人で立ち上げました。2001年のことです。いずれ世界に出ていく会社にするという思いはありましたから基礎はしっかりしなければと思い、ちゃんとオフィスを借りて、税理士も入れました。学生ですので価格も安くしましたし、結構たくさんの案件をいただきました。

――就職活動はなさったのですか?

一応しました。他の組織で働いたことがなかったし、周りの友人は大企業に入っていくので、興味はありました。金融機関に就職すればいろいろな企業の情報が集まってくるので面白そうだなと考えたのですが、どうもいろいろな人と話をしていると閉塞感ばかりが漂っていて。自分で事業をやった方がいいという結論に達しました。実はメガバンクを受けて落ちたんですけどね(笑)。

――創業からわずか10年ほどでここまで会社を大きくされたわけですが、ステージが変わったと思えたタイミングはいつでしたか?

自社製品を出した時ですね。まず、2004年の広告効果測定システム「ADEBiS(アドエビス)」が最初です。当時社員は5、6人いたでしょうか。Yahoo!で検索連動広告が増えてきた頃で、アクセス解析ソフトは結構出ていました。当社でも他の会社の解析ソフトを使って分析してレポート書いたりしていました。当事の広告業界では効果測定という概念が曖昧だったので、広告効果をもっと科学的に説明できるツールがいるのではないかと思ったことが開発のきっかけです。

それまでは受託開発をしていたわけですが、受託開発はずっとやり続けなければならないし、喜んでくれるのはお客さんだけ。もっと多くのお客さんに喜んでもらおうと思えば。やはり自社商品を開発するしかないと。その前にも自社商品はちょこちょこやってはいたのですが。失敗もいっぱいしました。例えば、昔、FTPソフトってあったでしょ?FTPの作業ってアップロードにかかる時間が結構長いので、その時間を楽しんでもらおうと思って一生懸命自転車をこいでいる絵を作りましてね。斜めになってひざを擦りながらこいだりね。そのデザインはめちゃくちゃこだわりました。まあ売れませんでしたけど(笑)。

fig_photo_01

――ADEBiSの評判はいかがでしたか?

他に広告効果測定サービスなかったので急速に普及しました。僕は、自社製品を成功に導くにはいくつかセオリーがあると思っています。一つ目は、現在やっている事業とのシナジーがあること。当社の場合、日々広告代理店と仕事しているので広告代理店に使ってもらえるサービスにするとか、今持っているお客さんや商流と重複していることが重要なポイントです。もう一つは継続すること。他社を見てると新しいサービスも1、2年であきらめてしまうケースがけっこう多いのですが、それではうまくいきません。最低3年はがんばらないと。
ブランディングも重要です。「ADEBiS」の場合も、キャッチ―なネーミングが受け入れられたと思っています。エビスくんというキャラクターも作って親近感を持たせる工夫もしました。

――オープンソフト「EC-CUBE」もすんなり売れたのでしょうか?

EC-CUBEを立ち上げた時の評判は社内外ともに最悪でした。オープンソースのソフトをビジネスで使うということはまだどこもやっていませんでしたから。社内からは「受託開発で稼げるのに、せっかく社員が作り上げてきたソースをみすみす無料で出すなんてどういうことか」と。一方外からは「価格破壊だ」と。案の定最初はさっぱり売れず、「それみたことか」とか「半年で失敗するだろう」という声が聞こえてきましたね。2年ほどは大変でした。説明しても見たこともないものなので、お客さんの理解がなかなか進みませんでした。

僕らが商品開発で常に意識しているのは広告を出して、その効果を測ろうとしている会社であり、ECサイトを構築して商売を成功させたいと考えている会社です。つまりエンドユーザーを幸せにできるかどうかの1点で考えています。それができていれば時間はかかっても支持は広がります。「EC-CUBE」は売れるまで結局3年かかりました。

――ベンチャー企業にしては珍しく早くから新卒を採用していたそうですね。

時代の変化が速いので、事業内容はどんどん変わっていきます。その都度プロジェクト単位で人を集めてきて出来上がったら解散するというやり方もあるのでしょうが、会社を長期的に発展させようと思えば理念が重要です。理念をしっかりと理解してくれる仲間がプロジェクトをどんどんどんどん生み出していく組織が理想で、そのためには新卒のほうが出会いの確率は高いだろうと考えています。もちろん、中途採用で技術も実績もあって、さらに理念が合致すればいいですけど。

――経営理念は「Impact On The World」ですね。

まだ社員が自分一人しかいない時に理念を考えました。新しい時代を切り開く革新的な製品やサービスには、心を揺さぶる力があります。スポーツの世界でいえばイチローがまさにそれを実践してみせました。私たちも同じように、高い理想を胸に走り続けることで、世の中へ何かを働きかけられると信じています。その想いを「Impact On the World 」という言葉に込めました。そのためには、目の前のことに流されるのではなくできるだけ本質を見抜くことが大切です。次の次にどうなるか。相手の相手がどう考えるかを見ていかなければなりません。併せて5つの行動指針「信頼性」「スピード」「独自性」「先進性」「主体性」を示しています。そこに賛同している人の集団であることが大事です。

――社是では真っ先に「全従業員の幸せのために」を掲げておられます。「働きがいのある会社ランキング」でも上位に選ばれています。

連帯感が評価されたということですが、まだまだ課題はあります。それぞれの社員が動けば摩擦は起きるわけですから当然です。そこで出てきた課題を解決していくことで、さらに働きがいのある会社になっていけばと考えています。

――今なお新しいことに挑戦し続けておられます。2010年には米国シリコンバレーに子会社を設立されました。その狙いは?

グローバルで活躍していこうと思ったら、出ていかないと。向こうに行って感じるのは、日本人はすごく内向きだということ。日本の企業はあまり行っていないし、行ったとしても継続性がない。まずトップ自らが出て行って現地のトップとコミュニケーションできるようにしないとビジネスがグローバルで動いていることが実感できないと思います。

シリコンバレーに行ってみて、日本人として活躍するのはもちろんですが、日本発で世界に活躍する会社を作りたいと改めて感じました。アメリカナイズしてビジネスをしても所詮二番煎じですから、日本の良さを再認識して現代風にアレンジしたとがったビジネスで挑戦したいですね。

シリコンバレーでアメリカ人の経営者と話をしていると生き残るためにオフショア開発は当たり前です。そこで、当社もベトナムにオフショア開発拠点を設けることにし、ベトナムの会社に問い合わせフォームを投げるところから始め、今年2月に開設しました。今年の社員旅行はその視察も兼ねてベトナムへ行きました。社員も成長する国の活力を感じてくれたと思っています。

アメリカはリサーチ拠点、ベトナムはオフショア開発拠点です。次は、東南アジアで自社製品の販売を考えています。インドネシアや中国あたりからでしょうか。10年でようやくここまで来たなという感じです。

――社員は60人近くおられます。組織が大きくなればなるほどベンチャースピリッツを維持することが難しくなっていくのでは?

全員がベンチャースピリッツを持つ必要はありません。最初の組織はイノベーションから始まるわけですが、そればかりでは会社は傾いてしまいます。事業を安定化させて粛々と仕事をするメンバーの存在も同様に大事です。このイノベーションと安定が両軸でバランスを取りながら大きくなっていくわけですが、ほとんどの人は安定を望みますから多数決すると安定に傾いてしまう。そこをイノベーション側に振るのがリーダーの役割ではないかなと思っています。

2012年12月10日
株式会社ロックオン
代表取締役社長  
岩田進氏

設立/2001年 従業員数/53名 事業内容/Eコマース関連ソフトウェア、インターネット広告関連ソフトウェアの企画・開発・販売。広告効果測定システム「ADEBiS」、ECサイト構築パッケージ「EC-CUBE」、リスティング自動入札ツール「AutoBid」は、全て国内シェアナンバーワン。

読者アンケート
ライター募集 フリーペーパーについて 本サイトについて

今月の町工場で働くオトコマエ

      
Bplatzのツイッター Bplatzのfacebook