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モバイル広告ビジネスで世界のBOP市場に挑む

ヨーヨーメイン

貧困解決の糸口はまず情報を得る機会を提供すること

深田氏が挑むのは人口40億人、500兆円市場ともいわれるBOP(Base of the Pyramid:貧困層)マーケット。現在のビジネスの“主戦場”はフィリピンだ。

フィリピンにおける携帯電話の保有率はほぼ100%。ここ1、2年で比較的手ごろなAndroid搭載のスマートフォンが一気に普及しつつあるという。

だが、通信料金はプリペイド(前払い)方式のため、店で通信料を払っては使い切る、そしてまた通信料金を購入する、といった行為を繰り返さないといけない。無駄遣いをしないよう大多数の人が普段はオフラインにしているため、インターネットサービスやアプリが普及しにくい現実がある。

そこで、深田氏は通信料を無料化に近づけるサービス「PopSlide」を事業化した。画面を開くと企業の広告が表示され、閲覧すると自動的にポイントが貯まる。そのポイントを、通信料に充てることで限りなく無料に近づけていく仕組み。企業からの広告料で収益を稼ぐというビジネスモデルだ。

この事業を始めた根底には「貧困を解決するには、教育にせよ、仕事にせよその機会を提供しなくてはいけない。インターネットにつながることでさまざまな情報に容易に接することができ、課題の多くが解決できる」という深田氏の強い信念がある。

ムハマド・ユヌス博士に刺激を受ける

大阪大学では生物工学を学んでいたが、大学院では工学研究科のビジネスエンジニアリングを専攻。理学、工学系の幅広い専門の学生とともに研究成果を事業につなげるための知識を学んだ。

当時最も影響を受けたのが貧困層向けに小口融資を行い、貧困層の自立と、事業の成長を同時に実現したグラミン銀行の創設者、ムハマド・ユヌス博士だ。「貧困層が受けている負の循環を断ち切る事業で、しかも高収益のビジネスモデルを築いたことに感銘を受けた。収益を出し継続できてこそ課題の解決につながる」。BOP市場にはまだまだイノベーションの余地がある。テクノロジーやビジネスを通じて貧困層が抱える課題を解決する大きなビジネスを手がけたいという思いが募った。

BOP市場で事業を興し、育てるには「今の自分ではまだまだ力不足」。そう感じた深田氏は「最もビジネスが学べそうな会社」を探し、モバゲーで勢いづくディー・エヌ・エーを選ぶ。退路を絶つため、「3年で辞めます」と採用面接で宣言し、「伸びている部署より、赤字部門か新規事業部門など自分が鍛えられる部署に配属してほしい」と願い出た。

入社後は希望どおり新規事業部署に配属され、寝る間を惜しんで働いた。社内で毎年行われたビジネスプランコンテストにモバイル分野でのBOPビジネスを提案したが、ことごとく却下される。「まだまだ机上で考えていたビジネスプランだった」。

現地で暮らしビジネスアイデアを練る

宣言どおり3年余りで退職。ぼんやりと描いていた事業計画を詳細に詰めることになって初めて「このビジネスを始めるには日本ではできない。英語も必要になる」と気づいた。「現地に住んで、そこで暮らしている人たちの実態や思いを知らなければ」と、退職4日後にはフィリピンへ飛んでいた。

セブ島にある語学学校でインターンとして運営を手伝いながら英語を学んでいるとき、たまたまその学校に資本参加しているという日本人投資家に出会った。せっかくの機会だからと温めていた事業計画をプレゼンしてみたが「けちょんけちょん」に叩きのめされる。

しかし人一倍負けず嫌いという深田氏はそこから一念発起。もう一度現地の携帯電話の使用状況や市場特性を詳細に調べ上げビジネスモデルも磨き直し、同じ投資家にリベンジでの再プレゼンをしたところ、先方の反応は「オモロいやないか!」。拍子抜けするほどのスピードで投資が決まる。

気がつけばフィリピンに渡って3カ月で会社を設立していた。とにかく動き続け、前に進むことで呼び込んだ縁に全てをゆだねた。「一番びっくりしていたのは妻だと思います。ちょっと行って帰ってくるくらいのつもりでいたでしょうから(笑)」。

日本での成功体験は通用せず

当初、広告営業では日系企業ばかりを攻めていたが、フィリピン人を雇用し営業を任せてからはグローバル企業との取引が一気に増えた。現在、フィリピンをはじめインドネシア、タイ、インド、ベトナムにも事業を広げつつあり、社員は25人にまで増えた。

しかし「ディー・エヌ・エー時代の成功体験はフィリピンではまったく通用しない」と深田氏は語る。「たとえば、日本では成長欲求を満たしたり、チャレンジできる環境を用意したりすることで社員のモチベーションを上げられるのですが、途上国の人たちはまず安定した仕事に就き、ファミリーとの時間を大事にしたいという気持ちが強い。シビアに実績で管理するより、お酒を一緒に飲んだりという濃いコミュニケーションを取るなかでモチベーションが上がるようです」。

新興国すべての人が常にインターネットにつながっている環境の構築をめざし、当面は東南アジア、南アジア全域の18億人の総オンライン化を目標に掲げる。ひとまず目標とする1億人のユーザー数獲得までの道のりはまだ先。

「高収益を上げながら貧困を解決できるBOPビジネス」の確立に向け、腰を据えての勝負、本番はこれからだ。

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▲広告アプリ「PopSlide」。ロックスクリーンを解除するだけでアプリ内のポイントが貯まり、ユーザーはそのポイントを利用してモバイル通信料金を無料で手に入れることができる。

(取材・文/山口裕史)

2015年07月09日
YOYO Holdings Pte. Ltd.
Co-founder&CEO  
深田 洋輔氏

従業員数/25名 設立/2012年

事業内容/新興国向けにモバイル通信料金を無料化するサービス「PopSlide」の開発・運営。

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