産経関西/産創館広場

外国人目線で誕生した食品サンプル販売サイト

2012.10.08

JDクリエイション

 きっかけはブログへの「そうやな。商売になるよ」という友人の何気ないコメントだった。米国出身のハナス・ジャスティン氏が、英語の大阪情報発信ブログで“フェイクフード”、つまり食品サンプルについて書いたことから、自分の会社JDクリエーション合同会社(大阪市西区)の新規事業として「フェイクフードジャパン」が動き出した。2011年のバレンタインデーだった。

 思い立ったら吉日と言わんばかりに、ハナス氏は製造メーカー数社にコンタクト。海外進出をしたいが、ノウハウもなくて困っていた1社と話が進み、1年数カ月後に英語の販売サイトを立ち上げた。今年8月には日本語サイトも準備。受注生産だが、すでに扱う品目は800点にまでいたっている。これは、外国語サイトの中では圧倒的な品ぞろえだ。

 食品サンプルが外国人観光客などに人気があるのはわりと知られた話だが、一体どんなところに魅力があるのだろうか。「まずは日本で独特に進化した文化だから。精巧に再現する職人技や、和洋中問わずどんな食品サンプルも作れてしまうのもポイント」と語る。

 また当然ながら、サイトに記載されているのは流暢な英文だ。海外から見れば日本人特有の英語より、ネーティブスピーカーによる英語の方が信頼感がある。実際、注文の5割が北米で、3割が欧州という内訳になっている。売れ筋はスイカのキーホルダーや、エビチリの名刺入れ、ミカンのマグネットなど。中にはカリフォルニア州の造形アーティストから、作品に使う特注品まで頼まれたこともあるという。

 実は食品サンプルの発祥は大阪。1932年から続く地場産業である。深い大阪愛をもつハナス氏は「大阪生まれの面白い商材や技術がせっかくあるのだから、世界に伝えてみんなに知ってもらい、楽しんでもらいたい」とフェイクフードへの思いは熱い。ゆくゆくはサンプル職人の育成までやってみたいとも考えている。しかし、それにはまず販売サイトの認知度を上げることとサイト自身の充実が不可欠だ。

 今の悩みは「和食の翻訳は骨が折れるところ。例えば『生麩』とかを英語になおすのは本当に難しい」とのことだが、フェイクフードを通じて同社の努力が和食の普及にも繋がっている。今後、フェイクフードが海外でどのように展開していくのか楽しみである。

(大阪産業創造館 プランナー 原田真愛)

JDクリエーションズ合同会社

http://fakefoodjapan.net/