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【長編】日本の伝統技術生かした磁器蓄光タイル被災地で量産化

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風呂設置工事、自動車部品の検査代行業を経て、磁器蓄光タイル「ルナウエア」の製造・販売業にたどりついた岩本氏。量産化に向け、東日本大震災の被災地、福島県川内村での工場建設も着手した。「被災地に雇用を生み出し、福島から省エネ商品を世界に発信したい」と意気込む岩本氏に、ルナウエア量産化にかける思いを聞いた。

―有田焼の伝統技術を使った蓄光タイル「ルナウエア」とは。

「ルナウエア」は、多治見焼のタイル地の上に有田焼の絵付け技法を組み合わせて生み出されました。光を溜め込むことのできる蓄光剤を表面に塗っており、太陽や蛍光灯の光のエネルギーを蓄えることで暗くなるとそのエネルギーを放出して光を発します。室内灯で20分照らせば8時間は光り続けるので、停電した場合への備えとして非常口を知らせる標識板などへの利用が進んでいます。

先に普及していた蓄光建材としては樹脂に蓄光剤を練り込んだ製品がありますが、熱に弱く、使ううちに擦り減ってしまい、だんだんと蓄光性能が衰えていってしまいます。その点、磁器は耐久性があり、800度の熱にも耐えるため火事などの災害時でもしっかりと光り続けられることが特長です。

―もともとはリフォーム工事業を営んでいたそうですね。

工業高校を卒業してからユニットバス工事の職人をしていました。商売人だった父の血が流れているんでしょうね。与えられた仕事を丁寧にやるだけではなく、どうしたらよその会社とは違うものを提供できるのかを常に考えながら仕事をしていました。例えば専門工具を導入することで工事のスピードが上がれば納期が短縮化できますし、人件費を減らすことで単価も抑えることができます。そうすると黙っていても仕事が入ってきます。20歳過ぎた頃には30人の職人を使うまでになり、全国の大規模なマンションや高級ホテルのバスルームの工事を任されていました。

ところが、バブル経済がはじけると仕事が一気に減ってしまいました。そこで流通に目を向けました。一般の消費者がお風呂をリフォームしたい場合、ユニットバスメーカーに問い合わせると系列の販売店を紹介されます。販売店の多くは、設置、配管、電気、部屋を作る大工、そして内装工事、さらには廃棄物処理の専門業者を束ねて工事を行うこともあります。ところが、こうして多くの専門業者を束ねると、業者ごとに諸費用が上乗せされます。このすべての工事を1社でできるようになれば安く抑えることができるだろうと考え、専門工事を自分たちで勉強し、配管から廃棄物処理までできるようにしました。そうすると、販売店の発注先である管材屋さんや材木屋さんからも声がかかるようになりました。結局最終的に施工するのはわれわれですから、実際のその工事を安くしかもノウハウを広く持ってできるうちのような業者が重宝がられたわけです。ある時はユニットバスメーカーの工事部として、またある時はガス会社の工事部として現場に仕事に行っていました。おのずとリフォーム工事も任されるようになり、さらに取引先が広がっていきました。

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―コドモエナジーを創業した経緯は。

広がっていく取引先の一つに上場している流通問屋がありました。その会社の常務が会社を辞めて、環境に配慮したものづくりの会社を興したいとのことで「営業は自分がやるから工事をやってくれないか」と相談があり、共同創業のかたちでつくったのがコドモエナジーです。最初に開発したのが、蓄熱式床暖房システム。上場をめざして木材住宅メーカー向けに勧めて販売していきました。しかしその共同創業者が創業2年目で亡くなってしまいます。そこで会社の財務内容を改めて調べてみたら、蓄熱式床暖房システムの基幹技術を持つヒーターメーカーへの特許実施権契約が非常に高く、1億円くらいあるはずのお金が全くないどころか3000万円を超える手形が残っていました。財務担当の役員にすべてを任せていた結果でした。東京に出していた事務所も引き払って支払いの一部に充てましたが、なお資金繰りに窮しました。

実はその前に出会った名古屋の会社の社長から自動車部品の検査代行会社やらないかと持ちかけられて、その仕事も始めていました。検査代行というのは、自動車部品メーカーに納入している地方の部品メーカーが、もし納入部品の不具合が出た時に、その全量検査をそのメーカーになり代わって行う仕事です。部品といっても鉄製、樹脂製、ゴム製のものもあれば加工も鋳物から押し出し成型まで様々なものがあります。すべての勉強をして全国の部品会社からの注文を受けるようになりました。この仕事が順調なおかげでなんとか経営が持ち直しつつあった矢先にリーマンショックです。

仕事がパタッと止まるわ、それでも人件費が出ていくわで、せっかく減りつつあった借金がまた膨らみ始めました。もうボロボロになって、死のうかなとも思いました。そんな私の苦労をずっと見ていたのが、コドモエナジーの亡くなった共同創業者の弟さんです。「兄が君を巻き込んだためにこうなったのは申し訳ない。君は僕の弟だと思ってできるこは何でもするから」と、連れて行ってもらったのが有田焼の窯元でした。そこで職人に見せてもらったのが、蓄光剤の入った光るタイルのかけらでした。なんや、この光るもんは、と思いましたね。こんなことができるんか、と。

―そこから「ルナウエア」の開発が始まったわけですね。

ところが職人に「値段は」と聞いたら、タイル10センチ角1枚で7000円だという。タイルは通常50円くらい、安いものだと20円ほどです。あまりにも高くて驚いたのですが、東京の商社が売ってくれそうだというので「それなら頑張ってみい。何かあったら電話しておいで」と声をかけてその場は終わりました。

しばらくしてその職人と連絡を取ったところ、販売がうまくいっていなかったようで、それなら引き払って大阪で一緒にやろうと言って、いよいよ蓄光タイルの商品化がスタートしました。

自動車部品はナノ単位の誤差でさえ良しとしない世界。そこからこの伝統工芸の世界を見るとあまりにも大きなギャップがありました。彼らは焼けばそのまま商品になると思っているわけです。でもそうはいきません。商品にする以上同じものを大量につくれないといけない。建築商材用の工業製品ではこんなものはあかん、と言うのですがなかなか理解してもらえませんでした。400年の歴史が染みついているんですね。

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―品質の面での苦労は。

タイル地の上に、蓄光剤を含む顔料とガラス材料を混ぜた上薬を塗ります。ところが、タイル地と上薬がつくるガラス地の膨張・収縮度合いが違うため、どうしても焼いた時に表面にひび割れが起きてしまうのが大きな課題でした。この度合いを同等にするためには上薬に含まれるシリカやアルミナなどの成分を多くする必要があるのですが、入れ過ぎると透明度が失われてしまい、蓄光剤の光を透過しにくくなってしまいます。最適な成分調整を見つけ出すのには7年の年月を要しました。

そして、有田焼の伝統技術を生かした省エネ商品ということで評価を受け、2012年には経済産業省から「ものづくり日本大賞内閣総理大臣賞」を受賞しました。初めはこの賞の価値をよくわかっていなかったのですが、当時の枝野幸男経済産業大臣から「ものづくりの世界では最も名誉ある賞だから」と言われました。

―どのように量産化を進めようと考えたのか。

自動車部品の検査代行の仕事では、お客さまが東北地方に多くありました。福島県にもだいぶ集積していました。東日本大震災後に被災地を見て回っていたのですが、なんとか被災地に工場をつくれないものかと考えるようになりました。震災で多くの被災者が電気のない生活を強いられ苦労をしたこと。そして何より、経済的に疲弊している被災地の雇用を生み出せないかと考えたのです。さっそく近畿経済産業局長のもとを訪ね、福島県に工場を建てたいのだけれど、補助金制度はないものかと聞いてみました。

そして昨年4月13日に建設候補地を探るべく、福島空港からレンタカーで被災地に入りました。空港から一番近くて、帰村宣言が出ている村が川内村でした。村には人っ子ひとり見当たりませんでしたが、役場に入るとたくさんの人がいて若い職員がてきぱきと帰村に向けた準備作業をしていました。笑顔で対応してくれる姿に打たれて、ここに工場を作りたいと思いました。その日のうちに工場用地を案内してもらい、川内村での工場建設を即決しました。

―量産化に向けた課題は。

蓄光塗料もいずれは3原色を作れるようにし、どんな色でも出せるようにしたいと思っています。日本の製造業は優れたメーカーがたくさんあるので、それをうまくつなぎ合わせていけば素晴らしいものが出来上がるはずです。またもっと輝度を高くする研究も進めています。

一番の課題はコストです。7000円だったタイル地の値段は2500円まで下がってきましたが、この半分くらいにはしたいと思っています。そのためには50センチ四方の大きなタイル地を製造してそれを切って使えるようにしなければなりません。タイル地は多治見焼のメーカーに作ってもらっているのですが、大きなタイル地は今の技術では作れないそうです。中国ではすでに作られているのですが、当社では外国産のものを使うつもりはありません。何とか多治見焼のメーカーに努力をしてもらっているところです。じゃあ実際に作って売れるのか。そこを開拓していくのが私の役割だと思っています。

20年後には磁器蓄光タイルが一般的な素材として当たり前のように使われる時代が来るでしょう。旅客機や船に塗れば暗い所や夜間でも識別できるようになるでしょうし、特定の色の光に集まってくる魚の特性に合わせて漁具を開発し漁に使うこともできるようになるかもしれません。

―工場の稼働予定は。

国の復興交付金の中から38億円の補助金を使わせていただくことになりました。ただこのお金は事業が終わってからでないと下りないお金なので、それまでのつなぎ融資が必要です。今金融機関に掛け合ってお願いに走り回っているところです。当社の「ルナウエア」の量産化が成功するか否かは、当社の事業化に向けた努力と、そのための国の支援の仕組みがどううまく組み合わさりながらスピード感を持って回っていくかにかかっています。その意味において、私たちはこれからの中小企業のモデルになるとの思いでがんばっています。ここまでやれるのは気合と根性。みなさんもあきらめないで前向きに事業に取り組んでいただきたいと思います。福島工場は2016年4月に稼働予定です。1日でも早く雇用を生み出して、「ルナウエア」を福島から発信していきたいと考えています。

2013年03月11日
コドモエナジー株式会社
代表取締役  
岩本 泰典人氏

創業:2004年   資本金:1億1000万円
事業内容:エネルギー関連商品開発及び技術コンサルタント、 蓄熱材をはじめとした省エネルギー床暖房機器の製造、販売、卸売り、施行及び保守サービス。

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