産経関西/産創館広場

ココナツでフィリピンの労働環境改善を

2012.12.24

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 ココナツ製品の輸入販売、および製品開発を行う株式会社ココウェル(大阪市都島区)。代表取締役の水井裕氏が起業したそもそものきっかけは、「環境問題」への興味だった。

 外国語大を卒業後、環境ビジネスにかかわる企業に就職。環境問題に対し、さらに専門性を高めたいと思い、専門学校に通った。さらに学校の長期休暇を利用し、発展途上国の環境問題を学ぶためにフィリピンへ留学。環境科学部に入学した。

 そこで、現地の環境問題を学ぶとともに「スモーキーマウンテン」と呼ばれるゴミ山にも出かけ、環境以上に深刻な貧困の問題に直面。学んできたことと現実との矛盾を感じ、大きな衝撃を受けた。

 「フィリピンでは地方が本当に貧しく、多くの人が仕事を求めて首都・マニラに集まってくるが、マニラの失業率は実質50%。結局仕事にありつけないという状況を根本から解決するには、地方の農産業を活性化させるしかない」。

 フィリピンには「ココナツ庁」という政府機関があるほど、ココナツが農家の生活基盤を支えている。そこでココナツを今まで以上に有効活用すれば、新たな収益モデルを生み出せるかもしれないという思いを抱き、日本へ帰国。約8年前に事業化を開始した。

 一般的に地方のココナツ農家は、収穫したココナツの実からコプラ=ココヤシの果実の胚乳(はいにゅう)を乾燥したもの=を作り、それらを売ることで収入を得ているが、安く買いたたかれるため採算が合わずに苦しんでいるのが現状だ。それならば商品力のあるものを作ることが収益に繋がると考え、ココナツ全てを使った製品開発・生産を現地で行うことにした。

 主な製品としては、生のココナツ果肉から低温・圧縮抽出した100%無精製・無添加のバージンココナツオイルや、ココナツオイルを使ったリップクリーム、せっけん、乾燥ココナツ、ココナツシュガーなどで、種類はさまざま。「今でこそ品質や流通も安定しているが、日本のクオリティに合わせるためには、文化の違いもあり、製品化に相当苦労した」と水井氏。その甲斐あってか、現在では約400店舗に製品を卸している。また、エコロジー関係のイベントへも積極的に出展し、インターネット通販も強化している。

 「今後の課題は『ココウェル』ブランドの浸透と、販路拡大、そしてココナツの新たな用途開発だ。少しずつ、そして着実に行っていきたい」と水井氏。日本国内での需要を増やすことで、フィリピンの労働環境を変えるべく挑戦が続く。

(大阪産業創造館 プランナー 松原充生子)

株式会社ココウェル

http://www.cocowell.co.jp/index.html